日本成長戦略、精読

17分野・62項目を、
単に図解・要約するだけでなく「選択・実装・検証」の3つの観点で読み解く。

01

はじめに

政府原文に基づく 3つの数字独自整理 本資料の構成
KEY MESSAGE 金額が大きいことと、戦略として強いことは同じではない。
問うべきは、なぜやるのか、どこに資源を集中するのか、どう実行するのか、成果と失敗を判定できるのかである。

日本成長戦略は、17の戦略分野、62の製品・技術、370兆円超の官民投資を掲げました。まず、規模を示す3つの数字から始めます。

目標
250兆円
2040年度の国内民間設備投資の官民目標📅 2040年度の年間額 | 対象=日本全体
計画
370兆円超
17戦略分野における官民投資の計画規模Σ 2026〜2040年度の累計・想定
単位
62項目
17分野の下で名指しされた製品・技術官民投資ロードマップの主要な製品・技術等

規模だけを見れば、日本の産業政策は大きく転換したように見えます。
しかし、投資額の大きさは、それ自体で戦略の強さを意味しません。問うべきは、次の3点です。

  • 選択どの分野に、何を狙って資金が寄せられているか
  • 実装その投資が、現場で実際に動く仕組みになっているか
  • 検証成果と失敗を、第三者が判定できるか

本資料では、まずなぜこの戦略が要るのかを押さえたうえで、この3点を順に確かめていきます。

本資料の見取り図

図|4つのPartが扱うもの

まずなぜやるのかを押さえたうえで、日本成長戦略を「選択」「実装」「検証」の3段に分けて読みます。
各Partが扱うのは次のとおりです。独自整理

PART 1 / 背景 なぜやるのか 国内の行き詰まり 潜在成長率0.6%。設備投資も研究開発も実質で横ばい 1-1 各国の産業政策 米・EU・英が、政府が投資条件を設計する競争へ 1-2 PART 2 / 選択 どこに賭けるのか PART 3 / 実装 何をするのか PART 4 / 検証 どうなれば成功なのか 17の戦略分野 危機管理投資・成長投資・AX 62の主要な製品・技術 実行の単位。項目ごとのロードマップ 370兆円超の官民投資 2040年度までの累計・想定 4つの政策手段 投資支援・需要創出・立地・国際連携 3類型の産業クラスター 地域未来戦略と連携して立地を整える 8つの分野横断課題 技術・資金・人材の詰まりを外す 原文が描く好循環 投資→民間投資→供給力→所得→消費→収益→税収 確かめられない5か所 成果が出たかを外から見られない場所 外部の評価 産業界・識者・市場・海外の見方 指標と引き金 何を測り、どこで止めるか(本資料の提案) Part 1 でなぜやるのかを押さえ、Part 2 で何にいくら賭けたのかを、Part 3 で政府が何をするのかを、Part 4 でどうなれば成功なのかを確かめる。

出所を示すバッジ 独自整理

本文の見出し・小見出し・図表には、その内容がどこまで公表資料で、どこから本資料の判断かを示すバッジを付けています。
バッジにカーソルを合わせる(スマートフォンではタップ)と、何の資料にもとづくかが出ます。

図|5つのバッジと、その境目
公表資料そのもの意味を変えずに要約または図解したもの
政府原文に基づく 「日本成長戦略」本文そのもの
政府資料 ロードマップ・会議資料・政府統計
外部資料 海外政府・国際機関・業界団体・報道
本資料の手が入った部分政府の公式分類・公式評価ではない
独自整理 原文を組み替えた。評価・推計は加えていない
独自分析 評価・示唆・試算・情報ギャップの判定

各節の末尾には「根拠資料」を折りたたんで置き、図表ごとの出典と独自判断の断り書きをまとめています。

根拠資料
  • 250兆円・370兆円超・62項目:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ章 p.1–3 S01/内閣官房「日本成長戦略 概要」(2026-07-21) S02/内閣府「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026-06-24) S03
  • 背景(なぜやるのか)と「選択」「実装」「検証」という4つのPartへの分解、および各Partへの節の割り当ては本資料の構成であり、原文にこの区分はない。
  • 出所の5分類は本資料の編集方針であり、政府の公式分類ではない。
PART 1|背景

なぜやるのか

この戦略が要る理由を、内と外の両側から確かめます。
まず1-1で、日本が直面する制約——投資の伸び悩み、資本生産性、潜在GDP、人材の偏り——を数字で押さえます。
次に1-2で、米国・EU・英国が政府主導の産業政策へ舵を切った流れを見て、日本の転換が何を追いかけているのかを確かめます。

02

1-1. 投資停滞と戦略が描く循環

政府原文に基づく 第Ⅰ・Ⅲ章政府資料 基礎資料・統計独自整理 循環の組み立て独自分析 参考値の計算
KEY MESSAGE 日本の課題は技術がないことではない。
技術を生産能力と事業成長、そして世界市場の獲得へ変える投資が弱いことにある。

原文はこの認識を、はっきり一文で述べています。政府原文に基づく

我が国の潜在成長率は、主要先進国と比べて低迷しているが、技術革新力や労働の効率性などを表す数値は他国と遜色がなく、圧倒的に足りないのは国内投資である。

いま日本で起きていること:投資停滞の悪循環 独自整理

日本成長戦略は、投資が伸びないことから始まる次の悪循環を前提にしています。
起点となる投資の伸び悩みと資本生産性の低さは、この節の後半で数字と国際比較により確かめます。
政府はこの悪循環が始まる①「投資が伸びない」の箇所に「政府が自ら投資し、政策で民間の投資を促す」ことで楔を打ち込もうとしています。これが日本成長戦略の出発点です。

日本成長戦略が打ち込もうとする楔 =政府が自ら投資し、政策で民間投資を促す(手段は3-1) 効くかどうかは4-1へ 1 投資が伸びない 2 供給力と資本生産性が 上がらない 3 技術を事業にできず 市場を失う 4 収益が伸びず 賃金も上がらない 5 次の投資が 先送りされる 投資停滞の 悪循環

戦略の成長サイクル 政府原文に基づく

原文では、楔が効いたときサイクルが反転し、投資から税収までの7つのステップが一つの循環として回ると想定しています。この7ステップは、上の悪循環とおおむね裏返しで対応します。(この対応づけは本資料の分析で、原文は両者を並べていません)
成長サイクルが余分に持っているのは、起点の①「政府が一歩前に出て投資を大胆に促す」=楔と、終点の⑦「税収の自然増」の2つだけです。
なお、この成長サイクルの実現性の検証は4-1で行います。独自整理政府原文に基づく

悪循環に打った楔=この① 上の図で①「投資が伸びない」に刺した楔が、ここから回り始める 1 政府が一歩前に出て 投資を大胆に促す 2 民間投資を誘発する 3 供給力を強化する 4 雇用と所得が増える 5 消費マインドが 改善する 6 事業収益が上がる 7 税率を上げずとも 税収が自然増 GDP拡大の 好循環 原文が描く7ステップ

投資の伸び悩み 政府原文に基づく

図|設備投資と研究開発投資の比較

設備投資は約1.3倍、研究開発投資は約1.1倍で、原文はこれを「実質で横ばい」と表現。

2013 2026 / 2024 設備投資 81兆円 107兆円 約1.3倍 研究開発投資 18兆円 20兆円 約1.1倍 兆円(実質)

設備投資:2013年1〜3月期と2026年1〜3月期(実質・季節調整系列、内閣府「国民経済計算」)
研究開発投資:2013年と2024年(実質、総務省「科学技術研究調査」)の比較

図|資本生産性の国際比較(2023年)

付加価値額を資本ストックで割った値。日本は主要国のなかで最も低い。

米国
0.31
ドイツ
0.24
英国
0.20
日本
0.18

原数値は原文脚注が引く University of Groningen「Penn World Table version 11.0」。

構造的な制約 政府原文に基づく

👥
ひと労働供給の制約

人口が減る中で、2040年にかけて理工・デジタル系人材と現場人材が不足すると見込む。地方では医療・介護・福祉、産業、インフラを支える人材が足りなくなる懸念がある。

🎓
ひと学びの構造のずれ

義務教育終了時には高い数学的・科学的リテラシーがあるのに、理系を選ぶのは高校で約30%、大学で約35%にとどまる。将来の人材需要とかみ合わない。

🌡️
需要景気の実感が偏っている

需給ギャップは0%近傍まで戻ったが、景気は十分に強くない。地方や中小企業には回復の実感がまだ広がっていない。

♟️
外部環境経済的威圧への備え

自国の主張に他国を従わせようとする動きが表に出てきた。重要鉱物では特定国の輸出管理強化で供給が不安定になっている。

🏦
財政財政運営の転換

長年続いた過度な緊縮志向から脱却し、「責任ある積極財政」の下で国内投資を起点に成長軌道へ戻すとする。

2つの前提 政府資料

原文がⅠ章で下している診断は一点、「潜在成長率は低いが技術革新力も労働効率も他国と遜色なく、足りないのは国内投資である」というものだ。
第Ⅲ-1章はこれを「設備投資・研究開発投資は実質で横ばい、資本の生産性も低い」と具体化している。
本資料はこの診断が成り立つかを、原文が数値を載せていない2つの側面——潜在成長率・潜在GDP(内閣官房 基礎資料)と、原文が脚注で引く2040年の就業構造推計(経済産業省)——から確かめる。

政府資料
0.6%
日本の潜在成長率(2025年)1991年の3.3%から低下した。内閣官房が国民経済計算とOECD推計をもとに作成した要因分解による。
政府推計
▲400万人
就業者数の減少(2022→2040年)約6,700万人から約6,300万人へ。ただしAI・ロボットの活用とリスキリングが進めば、総数では大きな不足は生じないと置いている。
ミスマッチ
340万人
AI・ロボット等利活用人材の不足総数では足りても、職種・学歴・地域では過不足が同時に起きる。現場人材260万人、理系人材120万人も不足する。
潜在GDPの国際比較(1991年=100、2024年)

日本の潜在的な生産能力が33年でどれだけ増えたかを、1991年を100として各国と比べたものです。
これは水準の指数であり、単年の潜在成長率の比較ではありません。 政府資料

米国
229
英国
183
フランス
167
ドイツ
155
日本
134

33年間の年平均に直すと、米国約2.5%、英国約1.8%、フランス約1.6%、ドイツ約1.3%、日本約0.9%です(指数から本資料が計算した参考値であり、資料の掲載値でもOECDの潜在成長率の系列でもありません)。原文の「主要先進国と比べて低迷している」は、この累積の差を指しています。独自分析

2040年の人材需給ミスマッチ

総数では大きな不足は生じませんが、職種・学歴別で見ると話は別です。
十分な国内投資と産業構造の転換が実現する場合を前提にした推計です。政府資料

不足する人材
AI・ロボット等利活用人材
340万人
現場人材
260万人
理系人材(大卒・院卒)
120万人
余剰となる人材
事務職
440万人
文系人材(大卒・院卒)
80万人

原文が挙げる「学びの構造のずれ」(理系を選ぶのは高校で約30%、大学で約35%)は、不足側の理系人材120万人と直接つながります。
また余剰側の事務職440万人は、17分野への投資が実際に起きた場合に動かす先が必要な人数でもあります。
原文は前者を課題として書く一方、後者の受け皿には触れていません。

ここまでの4つの数字——投資の伸び悩み、資本生産性、潜在GDP、人材の偏り——は、冒頭で示した投資停滞の悪循環の各段が、実際に起きていることの裏づけです。

根拠資料
  • 国別の潜在成長率・要因分解の所在:OECD Economic Outlook 統計付表/経済産業省「通商白書2016」第I-2-2節/日本銀行「需給ギャップ・潜在成長率」(四半期公表)
  • 医療・介護分野の地域別推計の所在:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数(都道府県別)」(2024-07-12)/同「看護職員需給分科会」需給推計
  • 潜在成長率・国内投資不足の診断:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ-1章 p.1、第Ⅲ-1章 p.40–44 S01
  • 設備投資・研究開発投資の推移、資本生産性の国際比較:いずれも原文脚注(第Ⅲ-1章 p.40 脚注62・63)が引く一次資料による。設備投資は内閣府「国民経済計算」(2026年1-3月期・2次速報)、研究開発投資は総務省「科学技術研究調査」(いずれも出典一覧に個別のカードなし)、資本生産性は University of Groningen「Penn World Table version 11.0」 S27
  • 潜在GDPの国際比較(1991年=100)・潜在成長率の要因分解:内閣官房「日本成長戦略会議 基礎資料」(2025-11-10 資料9)p.1。各国の潜在GDPはOECD Economic Outlook 117の推計 S25
  • 人材需給ミスマッチ(全国・職種別・地域別):経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」(2026-03)p.5–8 S23/同(2026-06)p.6–9 S24
  • 労働供給の制約・学びの構造のずれ:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅲ-4〜7章 p.52–66 S01
  • 投資停滞の悪循環・戦略の成長サイクル(図):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ章 p.1–3 S01
  • 「投資停滞の悪循環」は原文の記述をつないで輪の形に並べ直した本資料の整理であり、原文にこの図はない。悪循環と成長サイクルを「同じ輪の逆回転」として対応づけたのも本資料の読み方で、原文は両者を並べていない。いずれも政府の公式見解ではない。
03

1-2. 各国の産業政策

政府原文に基づく 第Ⅰ章外部資料 各国政府資料
KEY MESSAGE 各国の産業政策は市場任せから、政府が投資条件・初期需要・国内立地を設計する競争へ移った。
米国は補助・税額控除、EUは域内生産能力・需要創出・規制簡素化、英国は10年の予見可能性、日本は62項目の官民ロードマップを中核に据える。

世界情勢 政府原文に基づく

世界を見渡せば、政府が一歩前に出て、官民が手を取り合って重要な社会課題の解決を目指す新たな産業政策が大きな潮流となっている。

原文はこの潮流を「パラダイムシフト」と呼び、「責任ある積極財政」の下で内外一体の政策を打ち出すと続けます。政府原文に基づく

原文が具体名を挙げて言及する対外的な論点は、次の4つです。政府原文に基づく

🧭
米国関税への対応

対応の重要性が増している。
グローバルサウスを含む海外展開支援を進める。

⛓️
特定国への依存

太陽電池は特定国が約8割のシェア。港湾荷役機械も特定国が圧倒的で、重要鉱物は輸出管理強化で供給が不安定に。

🚀
宇宙の開発競争

米・中・欧・印が打上げ能力を強化。
月面・低軌道では米中を始め開発競争が激化している。

🤝
同志国・同盟国との連携

日米戦略的投資イニシアティブ、AZEC、POWERR Asia、AETI、CPTPPの拡充を含むEPA、G7・OECD・国連関連機関。

図|4地域の産業政策比較

4つの軸で比較。 行(国・地域)を押すと、その地域の代表的政策・対象・特徴が下に開きます。 外部資料

国・地域 政策手段 需要創出 国内立地の条件 投資期間の固定
米国CHIPS Act / IRA押すと詳細 ▾ 補助金+税額控除CHIPS 約527億ドル・IRA税控除 税控除で市場を誘導生産・投資税額控除が中心 国内生産が支援の条件支援は米国内投資に限定 複数年の法定プログラム法律で枠組みを固定
EUClean Industrial Deal / NZIA押すと詳細 ▾ 資金動員+規制改革1,000億ユーロ超・許認可迅速化 調達を市場設計に使う公共調達・入札に非価格基準 政策目標(支援条件ではない)2030年に域内製造能力40%。NZIAが掲げる政策目標・ベンチマークで、個別支援の適用条件とは別 2030年ベンチマーク目標年を明示して誘導
英国Modern Industrial Strategy押すと詳細 ▾ 8分野の個別計画分野別Sector Plansに集約 調達・輸出は計画内分野計画に組み込む形 地域・技能と一体地域計画・人材を統合 10年固定予見可能性を明示的に売りに
日本日本成長戦略押すと詳細 ▾ 需給両面の総合支援補助・税制+調達・価格差支援 初期需要を政府が作る公共調達・アンカーテナンシー 集積で立地を誘導クラスター3類型・GX戦略地域 2040年度まで複数年度・シーリングなし
制度の強い特徴明示あり限定的・分野別濃さはこの図の中での相対的な強弱で、他の図の濃さとは対応しません

共通点は「補助金の額」ではなく、民間投資の前提条件を長期に固定すること。
EUの40%は個別支援の立地条件ではなく、Net-Zero Industry Actが掲げる政策目標・ベンチマークである。
英国の10年は個別支援の条件ではなく、産業戦略の計画期間を指す。性質の異なる数字を同列に比較していない。

日本が変えようとしていること 政府原文に基づく

過度な緊縮志向が続いた
→
「責任ある積極財政」へ転換する
単年度予算が中心で、民間からは先が読めなかった
→
『「強く豊かな日本」投資枠』を創設し、複数年度の計画を基本にする。
要求上限(シーリング)は設けない経済安全保障上とくに重要な分野は特別会計で別枠管理し、償還財源の裏付けのあるつなぎ国債で規模を確保する
支援は研究開発に寄りがちだった
→
実証・量産から公共調達による初期需要の創出まで、広く支援の対象にする
成長政策と経済安全保障が別々に動いた
→
危機管理投資と成長投資を同じポートフォリオとして扱い、AX(AIトランスフォーメーション)を加速装置に据える

経済学との関係(簡易) 外部資料独自分析

政府が産業に前へ出ること自体は、いまや各国の主流です。
ただし政策の現場で主流になったことと、経済学で決着がついたことは別で、学界の賛否は分かれたままです。懐疑側の反論は、昔から2つに集約されます。

  • 情報の問題政府に、どの分野が儲かるかは分からない
  • 政治の問題一度始めた支援は、業界の圧力で止まらなくなる

だからこそ、産業政策を擁護する側こそがこの2つへの答えを設計に組み込むことを条件として挙げてきました。特に、撤退の条件をあらかじめ決めておくことが、その中心にあります。以下は、擁護論が支援の設計に求める要素を順序どおり7段階に置き、日本成長戦略がどこまで設計されているかを当てはめたものです。外部資料

図|産業政策の設計プロセスと日本成長戦略

擁護論が支援の設計に求める順序を7段階に置き、日本成長戦略がどの段まで設計されているかを当てはめました。資金を入れ、需要と立地をつくり、期間を固定するところまでは設計されています。効果を測り、未達なら畳むところが設計されていません。独自分析

産業政策の設計プロセス日本成長戦略では
1対象を選ぶ17の戦略分野と62の製品・技術を名指しした
2資金を入れる『「強く豊かな日本」投資枠』と税制・融資・保証
3最初の需要をつくる公共調達とアンカーテナンシーで初期需要を確保
4国内立地を条件づける産業クラスター3類型とGX戦略地域で立地を誘導
5期間を固定する2040年度までの複数年度・シーリングなし
ここから先が、設計に入っていない
6効果を測る投資誘発率のように、政策の効き目を測る指標を置いていない
7未達なら畳み、資源を回す「投資誘発効果の薄い予算は柔軟に見直していく」と書くが、薄いの基準がない
根拠資料
  • 世界情勢の認識・日本の政策転換・2つの成長軌道とAX:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ-1〜3章 p.1–3、第Ⅳ章 p.71–72 S01
  • 米国:NIST「CHIPS for America」S07/米エネルギー省「Inflation Reduction Act of 2022」S08
  • EU:欧州委員会「Clean Industrial Deal」S09/「Net-Zero Industry Act」S10
  • 英国:英国政府「Modern Industrial Strategy」(2025-06-23)S11
  • 4地域の比較軸(政策手段・需要創出・国内立地の条件・投資期間の固定)の設定と各セルの要約は本資料による。
    金額は制度定義が異なるため横並びの総額比較には使っていない。
  • 産業政策には退出条件が要るという議論:Dani Rodrik “Industrial Policy for the Twenty-First Century”(2004)/“One Economics, Many Recipes: Globalization, Institutions, and Economic Growth”(Princeton University Press, 2007)ほか。本文の記述は特定の一文の引用ではなく、複数の論考に通底する主張を本資料が要約したもの。
  • 産業政策の設計プロセスを7段に分解し、日本成長戦略の状態を当てはめる整理は本資料による。原文にも各国の資料にもこの分類はない。

Part 1の着地|投資が伸びないという国内の診断と、各国が産業政策へ舵を切ったという外の変化。政府が前に出る理由はここにある。ただし「やる理由がある」ことと「賭け先が正しい」ことは別で、次のPart 2では、370兆円がどこへ向けられたのかを見る。

PART 2|選択

どこに賭けるのか

370兆円がどこへ向けられたのかを追います。
2-1で17の戦略分野が何を狙っているのかを、2-2で62項目への資金配分と、その集中がどこに寄っているのかを、2-3で原文が掲げる市場獲得の目標がどこまで具体化されているのかを見ます。

04

2-1. 17分野の狙い

政府原文に基づく 第Ⅰ・Ⅱ章独自整理 5群に再分類
KEY MESSAGE 17分野は成長市場だけを並べたものではない。
成長性、経済安全保障、社会基盤、地域への波及という複数の目的から選ばれている。

17分野は、成長市場を並べただけのものではありません。まず、何を基準に束ねられているのかを見ます。

政策目的で見た5つの群 独自整理

17分野を政策が最終的に実現したい5つの目的で分類しました。なお原文は17分野を並列に列挙しており、群分けはしていません。
ただし各群の性格は、原文の各分野の書き出しを根拠に記載しています。

図|17分野を束ねる5つの政策目的

目的を押すと、その群の説明と所属分野が下に開きます。分野を押すとA-3の個票へ移動します。各群は排他的ではなく、一つの分野が複数目的を持ち得ます。

17戦略分野
62製品・技術
01世界市場を取りに行くAI・半導体/量子/航空・宇宙/フュージョン
02供給の途絶と依存を断つ防衛/海洋/造船/重要鉱物・部素材
03暮らしと生存を支えるエネルギー・GX/バイオ/創薬・医療/食料
04社会の土台を強くするデジタル・サイバー/通信/防災/物流
05文化で稼ぐコンテンツ(ゲーム・アニメ・マンガ・音楽・実写の5項目)

注意: 成長投資と危機管理投資は二者択一ではありません。例えばAI・半導体は「世界市場獲得」と「依存低減」を同時に担い、GXは「生存基盤」と「市場獲得」をまたぎます。

17分野それぞれの「位置づけ」「主な政策目的」「最大のボトルネック」「代表的な政策手段」「代表KPI」と、62製品/技術との対応は、A-3の分野ピッカーに統合しました。分野を選ぶと個票が開きます。

17分野はいずれも、地域未来戦略の「戦略産業クラスター計画」(類型A)の対象候補です。同計画は17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点とすると定義され、要件の第一に「官民投資ロードマップ等との整合」が置かれています。地域側の受け皿は3-5を参照。政府資料

17分野の下に置かれる62項目 政府原文に基づく

原文は、国内の経済安全保障などのリスク低減の必要性、海外市場の獲得可能性、関係技術の革新性といった観点から、官民投資を優先的に支援すべき62項目を特定しています。政府原文に基づく

官民投資ロードマップ(S04・全324ページ)のPDF上は64個の個票が掲載されていますが、「グリーン鉄」と「バイオ医薬品・再生医療等製品等」がそれぞれ2分野に重複掲載されるため、ユニークな主要製品・技術等は62項目です。 政府資料 独自整理

全62項目の一覧(分野別の絞り込み・項目名検索つき)はA-3「62項目の個票」にあります。
この62項目に資金がどう配分されているかは、次の2-2で見ます。

根拠資料
  • 17分野の一覧と選定の観点:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ-1章 p.1–2、第Ⅱ-1章 p.3–4 S01
  • 危機管理投資・成長投資・AXの定義:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ章 p.1–2 S01
  • 5つの政策目的への群分けは本資料による再分類であり、政府の公式分類ではない。原文は17分野を並列に列挙している。
05

2-2. 62項目への資金配分

政府資料 官民投資額資料政府原文に基づく 第Ⅱ-1章独自分析 再集計・参考値
KEY MESSAGE 官民投資はAI中核半導体68兆円を筆頭に、デジタル基盤・コンテンツ・創薬へ大きく配分される。

注意:本資料による機械集計|重複・期間差を含む参考値。(S01)

原文が投資規模について書いているのは、次の一文が中心です。政府原文に基づく

「官民投資ロードマップ」に基づく総合支援策の着実な実行を前提にすると、62の「主要な製品・技術等」全体で想定される官民の国内投資の規模は、現時点で2040年度までに累計370兆円超である。

読み取れる性格は3つ。
条件つき(総合支援策の着実な実行が前提)、官民合算(政府と民間の内訳はない)、暫定値(「現時点で」と断り、62項目は今後見直す)。そのため、政府の政策総額、確定投資額、年度別予算、投資優先順位として扱ってはいけません。
項目別の内訳は2026年6月24日の経済財政諮問会議資料で公表されており、以下はそれを本資料が再集計したものです。独自分析

数値の読み方 独自分析

この下のランキング・グラフを読む前に、数値の性格を押さえておきます。

表|4つの数値の作り方と、言えること・言えないこと
指標 数字の作り方 言えること 言えないこと
官民投資額 確定予算や企業コミットメントの合計ではなく、ヒアリングと将来の伸び率による推計 政府が想定する官民投資の規模が大きい 政府予算が大きい、実行確度が高い
経済波及効果 産業連関分析による試算。項目間で効果が重複し得るため、62項目の合算はできない 産業連関上の波及が大きく試算された 市場規模が大きい、政策の純効果が大きい
投資額/波及効果比 公表された2つの数値から求めた比率 試算上、投資額に対する波及が大きい ROIが高い、政策優先度が高い
上位10項目の集中度 公表額を単純合算した参考値(重複・期間差を含む) 想定投資額の配分に偏りがある 政策資源や実予算が同じ比率で集中する

全項目が同じ確度のコミット済み投資ではありません。市場獲得の目標(シェア・金額)は2-3にまとめています。

表|例外値の扱い
項目 原文の状態 グラフ・集計上の扱い
LNG運搬船 投資額・波及効果とも今後精査 0円に置換せず「未確定」として別枠表示
艦艇 投資額は2026年度予算約3,400億円、波及効果は検討 累計ランキングと散布図からは分離し「期間不一致」と表示。分野別集計と単純合計には含める
防災技術 2.6兆円+国土強靱化約20兆円強の内数 2.6兆円のみをプロットし、約20兆円強は注記
グリーン鉄 2分野に同一値で掲載 散布図では1点、分野フィルターでは両方に表示
バイオ医薬品・再生医療等製品等 2分野に同一値で掲載 散布図では1点、分野フィルターでは両方に表示

全62項目の投資額ランキング 独自分析

数値が示されたユニーク61項目(62項目からLNG運搬船を除いたもの)の単純合計は395.64兆円(重複・期間差を含む参考値。艦艇は2026年度予算のみで期間が異なりますが、分母には含めています)。公式の「370兆円超」は項目間の重複を排除した値であり、両者は一致しません。上位10項目の合計247.9兆円は、単純合計の62.7%にあたります(政策間の重複を含む参考値)。集計基準が異なるため、370兆円超を分母にした構成比は用いません。

図|官民投資額 上位10項目と集中度

横棒は官民投資額、右の4列は投資額・経済波及効果・単純合計395.64兆円に占める比率と、その累積です。上の帯は同じ比率を1本に並べたもので、色つきが上位10項目、灰色が残る51項目です。
項目数では62に分散するが、金額では上位10項目に6割超が集まる。特にAI中核半導体——下の表の01「フィジカル・インテリジェント・システムの中核を担う半導体」を、本資料ではこう略します——だけで68兆円と突出している。
行にカーソルを合わせると(スマートフォンではタップ)、その項目の注記と期限が出ます。

62.7%上位10項目の合計 247.9兆円が、単純合計395.64兆円に占める比率
(政策間の重複を含む参考値)
項目官民投資額経済波及効果単純合計比累積
01 フィジカル・インテリジェント・システムの中核を担う半導体 68.0兆円 443.3兆円 17.2% 17.2%
02 クラウド・データセンター、蓄電池 32.7兆円 107.1兆円 8.3% 25.5%
03 ゲーム 24.5兆円 191.4兆円 6.2% 31.6%
04 ファーストインクラス/ベストインクラス製品 23.4兆円 162.1兆円 5.9% 37.6%
05 バーティカルAI 23.1兆円 222.0兆円 5.8% 43.4%
06 バイオ医薬品・再生医療等製品等 20.8兆円 174.9兆円 5.3% 48.7%
07 次世代ワイヤレス 20.5兆円 223.5兆円 5.2% 53.8%
08 バイオものづくり 12.8兆円 66.7兆円 3.2% 57.1%
09 革新的デバイスを活用した先端医療 11.6兆円 105.8兆円 2.9% 60.0%
10 フィジカルAI 10.5兆円 144.4兆円 2.7% 62.7%

11位以下を含む全項目はA-3のマスター表を参照。バイオ医薬品・再生医療等製品等は2分野に重複掲載のため一度だけ計上。

ここまでは項目の単位で見ました。
同じ62項目を分野の単位で束ね直すと、集中は個別項目の突出ではなく、分野の偏りとして現れます。

図|17分野別の再集計(本資料による機械集計)

公式の分野別集計は未公表のため、62項目の公表額を分野単位に足し上げた参考値です。再掲2件は初出分野(⑨マテリアル・⑩合成生物学・バイオ)に1回のみ計上。期限の異なる項目を混在させたままの機械集計であることに注意してください。

🧠 ① AI・半導体
101.6
🛡️ ② デジタル・サイバーセキュリティ
55.4
💊 ⑪ 創薬・先端医療
43.3
🎬 ⑰ コンテンツ
33.7
🧬 ⑩ 合成生物学・バイオ
33.6
📡 ③ 情報通信
28.8
⚡ ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX
24.6
🚀 ⑥ 航空・宇宙
18.5
🧲 ⑨ マテリアル(重要鉱物・部素材)
16.9
⚛️ ④ 量子
13.2
🌾 ⑯ フードテック
9.7
🎖️ ⑤ 防衛産業
5.0
🌊 ⑦ 海洋
3.3
☀️ ⑬ フュージョンエネルギー
3.1
🏗️ ⑭ 防災・国土強靱化
2.6
⚓ ⑮ 港湾ロジスティクス
1.2
🚢 ⑧ 造船
1.1
世界市場を取りに行く供給の途絶と依存を断つ暮らしと生存を支える社会の土台を強くする文化で稼ぐ色は 2-1 の政策目的5群

単位は兆円。最長の帯=①AI・半導体101.6兆円を100とした比率。

図|官民投資額 × 経済波及効果(60項目・両対数)

横軸=官民投資額(兆円)、縦軸=経済波及効果(兆円)。いずれも政府試算で、期限(2030〜2040年度)は項目ごとに異なります。色は2-1の政策目的5群。円の大きさに意味は持たせていません(統一可能な第3指標が無いため)。点にポインタを乗せると項目名・期限・該当ページが出ます。

世界市場を取りに行く供給の途絶と依存を断つ暮らしと生存を支える社会の土台を強くする文化で稼ぐ
0.1 0.3 1 3 10 30 68 0.3 1 3 10 30 100 300 波及=投資×1 波及=投資×10 官民投資額(兆円・対数軸) 経済波及効果(兆円・対数軸) AI中核半導体 製錬・分離精製等 0.2倍 クラウド・DC 3倍 ゲーム 8倍 自動運転 23倍 デュアルユース 27倍 アニメ 28倍 次世代船舶 10倍 港湾荷役機械 2.5倍 サイバーポート 2倍

別枠:LNG運搬船(投資額・波及効果とも今後精査=未確定として除外、0円に置換しない)/艦艇(投資額は2026年度予算約3,400億円のみで期間不一致のため除外)。グリーン鉄・バイオ医薬品等の再掲2件は1点のみ表示。
産業連関上、取引連鎖が長い項目ほど大きく出やすく、項目間の重複もあります。独自分析

根拠資料
  • 62項目別の官民投資想定額・積上げ方式・重複排除・累計フローの定義:内閣府「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026-06-24) S03/内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21)各個票 S04
  • 総額370兆円超:内閣官房「日本成長戦略 概要」(2026-07-21) S02/内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) S01
  • 分野別金額の照合:Nikkei Asia S19
  • 全項目ランキング、分野別の集計、集中度(上位10項目247.9兆円=単純合計395.64兆円の62.7%)、散布図は公表額から本資料が再計算した参考値。期間差と政策間の重複を含むため厳密な構成比ではない。
06

2-3. 市場獲得の目標

政府資料 ロードマップ等政府原文に基づく 第Ⅱ章独自分析 参考比率・比較
KEY MESSAGE 原文は62項目に市場獲得の目標を課すが、その確からしさを測る材料を十分に出していない。
また、日本の競争優位は材料が乏しく、原文は定性的な「強み」を書くだけで、特許シェアや貿易特化係数のような測れる指標や評点は置いていない。

原文は多くの項目に「いつまでに、世界でどれだけ取るか」を書いています。
書き方は2通りあり、シェア(%)で書く項目と、市場予測と目標額のペアで書く項目です。

市場獲得の目標(原文明記の全項目)

帯の色は2-1の政策目的の群。時点は項目ごとに異なるため、ラベルと吹き出しに併記しています。
Bは市場規模と目標額の2つの数字を持つため散布図にしています。
参考比率は原文の掲載値ではなく、この2つから本資料が計算した参考値です。独自分析

A|世界シェア(%)で明記された目標
革新的金属部素材/半導体回路向け(2030年)
80%
革新的金属部素材/航空機エンジン向け(2030年)
50%
民間航空機/次期単通路機のエンジン
約40%
GXケミカル(2040年)
4割
海底ケーブル
35%程度
フィジカルAI/AIロボット(2040年)
3割超
量子通信/QKD装置(2035年)
3割
フュージョンエネルギー(中長期)
約3割
海洋無人機
3割
植物工場(2040年)
3割
陸上養殖(2040年)
3割
港湾荷役機械/ 米国市場(2040年頃)
3割程度
自動運転技術(2030年代)
約25%
量子センシング
20%
バイオものづくり(2040年)
10%
バイオ医薬品・再生医療等製品等(2040年)
10%
オール光ネットワーク/光伝送装置(2030年)
10%
B|金額で明記された目標

横軸は原文が挙げる世界市場の規模(2.5兆円から200兆円まで幅があるため対数目盛)、縦軸は参考比率=目標額÷市場規模。
円の大きさは目標額の大小の目安です(見やすさのために下限を設けており、面積は目標額に比例しません)。参考比率は原文の掲載値ではなく、原文の2つの数字から本資料が計算した参考値です。

0% 10% 20% 30% 40% 2.5 5 10 25 50 100 200 世界市場の規模(兆円・対数目盛) 参考比率 革新的デバイス(医療機器) 35% フィジカルAI/AIロボット 33% 月面市場 32% 水素等 29%* 地球低軌道市場 11% 新規食品 10% 食品機械 9% 空飛ぶクルマ 0.08%

比較可能な8項目の参考比率は、中央値を仮定した水素等を含む29〜35%の4項目と、11%以下の4項目に分かれ、中間がない。人工衛星・サービスは、分母となる世界の宇宙市場全体と、分子となる衛星製造・運用、通信・データ利活用の対象範囲が一致しないため、比率比較から除外した。市場規模との対応も一定ではなく、年2.5兆円の月面市場で32%、約200兆円の空飛ぶクルマで0.08%と、同じ「金額で書かれた目標」でも狙う濃さが400倍離れています。

数値で見る(9項目)
項目 世界市場の規模 目標額 参考比率 時点
革新的デバイス(医療機器)約80兆円28兆円35%2040年
フィジカルAI/AIロボット約60兆円20兆円33%2040年
月面市場年2.5兆円約8,000億円32%2040年
水素等30〜40兆円年10兆円29%*2050年
地球低軌道市場年3兆円約3,300億円11%2040年
新規食品29兆円3兆円10%2040年
食品機械33兆円3兆円9%2040年
人工衛星・サービス世界の宇宙市場全体:1兆ドル超(2030年代半ば)約12兆円算出不可
対象範囲・通貨・時点が不一致
2040年
空飛ぶクルマ約200兆円(S01。S04は約1.5兆ドル)約1,500億円0.08%2040年頃

* 水素等の29%は、原文の市場規模30〜40兆円の中央値35兆円を分母とした本資料の仮定値である。原文に29%という獲得率の記載はない。市場規模の上下限をそのまま使用した場合、参考比率は25〜33%となる。

C|コンテンツ5分野の海外売上げ目標(兆円・2033年)
🎮 ゲーム
12.0
🎞️ アニメ
6.0
📚 マンガ
1.0
🎵 音楽
0.7
🎥 実写
0.5

Cの5分野の合計は20.2兆円で、産業全体目標の20兆円とほぼ一致します。

市場が大きいことと、有望であることは別です。 空飛ぶクルマは、S01では世界市場約200兆円、S04では約1.5兆ドルと示されているが、S01の円表記と約1,500億円の目標額から求めた参考比率は0.08%である。
港湾荷役機械のみ米国市場でのシェアです。
市場予測の多くは「〜との予測もある」という書き方で推計主体が示されておらず、また世界シェア・国内市場・売上高・導入量が同じ「主な目標」の欄に並ぶため、横並びの比較はできません(A-1)。

根拠資料
  • 市場獲得の目標(世界シェア・市場予測と目標額):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅱ-2章 p.4–39 S01/内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04
  • 技術・事業フェーズの分類:内閣府「戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(案)参考資料」(2026-07-21) p.3 S28
  • 項目別投資額:内閣府「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026-06-24) S03
  • 参考比率(市場予測に対する目標額の比率)の算出と、項目間の比較表示は本資料による。参考比率は原文の掲載値ではない。

Part 2の着地|政府は重点分野に大規模資金を誘導する。一方、投資規模だけでは、その資金が成長に変わる経路までは分からない。次のPart 3では、投資を成長に変える「実装」の条件を見る。

PART 3|実装

何をするのか

選んだ先へ、資金が実際に流れる仕組みがあるかを見ます。
3-1・3-2で政府が使う4つの政策手段と分野別のパッケージを、3-3で技術・資金・人材など8つの分野横断課題を、3-4で資源の制約を、3-5〜3-7で地域への実装とそれがどこまで波及するかを確かめます。

07

3-1. 政策手段の類型

政府原文に基づく 第Ⅱ章独自整理 4類型に整理独自分析 重心の評価
KEY MESSAGE 政府の役割は投資にとどまらない。
初期需要、量産の見通し、立地条件、海外展開まで含めて、投資回収の不確実性を下げることにある。

原文はこれを「民間投資のボトルネック(不確実性要因、リソース制約)の解消と、更なる投資を促すアクセラレーターの保有を両輪とする」と表現しています。また、企業の予見可能性を高めることが必要だと繰り返し述べています。政府原文に基づく

この節は3段構えです。
まず原文に散らばる政策手段を4つの型に束ね、次にそれがどの発展段階で効くかを掛け合わせます。
最後に、型の使い分けが項目ごとにどう違うかを見ます。
この4つの型は本資料を貫く共通の物差しで、3-2では62項目の施策すべてにこの型のタグを付け、4-1では成長サイクルのつなぎ目ごとに「どの手段が効かなかったときに止めるか」を置きます。

なお、ここで扱うのは17分野側の政策手段です。同じ手段を地域で実行する側の枠組みとして、地域未来戦略は個別企業への支援/成長資金の供給/インフラ整備/規制・制度改革/産業人材の育成の5点を、3類型の計画に対する支援施策として定めています(3-6)。政府資料

4つの政策類型 独自整理政府原文に基づく

62項目の個票に書かれた施策を並べると、手段は4つの型に収まります。
個々の手段はすべて原文に出てくるものですが、型の分け方は本資料のものです。

💰 国内投資支援

解消する障壁:技術の不確実性、初期費用、量産規模に届かないこと

研究開発支援実証事業設備投資支援量産設備投資支援グリーンイノベーション基金造船業再生基金宇宙戦略基金(速やかな1兆円支援)研究開発税制の強化令和8年度税制改正の投資促進税制安定供給確保支援基金JOGMEC出資金

🛒 需要創出・市場確保

解消する障壁:初期需要がないこと、導入実績がないこと

公共調達アンカーテナンシー(公共調達による初期需要確保)政府の率先導入グリーン購入法を踏まえた優先的調達公共工事でのグリーン鉄調達防衛調達とファストパス調達価格差支援長期脱炭素電源オークション認証制度L2++車両の優良認定制度オフテイク購買JIS規格の活用

🏭 立地競争力強化

解消する障壁:国内立地のコスト、電力・用地・人材の供給制約

工業用水・道路・鉄道・港湾施設の整備電力・通信インフラ整備地域間連系線と系統用蓄電池GX戦略地域制度国家戦略特区産業用地整備向けの地方公共団体への長期低利融資企業版ふるさと納税試験実証インフラテストベッド環境人材育成拠点

🌐 国際連携

解消する障壁:海外販路がないこと、ルール形成で後れを取ること

国際標準化(官民ハイレベルフォーラム、専門機関の伴走)ODA・OSA輸出金融(国際協力銀行など政府系機関)AZEC/AZEC 2.0POWERR AsiaAETICPTPPの拡充を含むEPAJETROと在外公館の体制強化日米戦略的投資イニシアティブG7・OECD・国連関連機関でのルール形成
図|どの段階で、どの政策類型が効くか

政府資料の4つの技術・事業フェーズに、本資料が分析上追加した「海外展開」の支援工程を加え、4つの政策類型と掛け合わせ、原文の施策がどこに厚いかを濃さで示しました。
各マスの文字は代表的な手段で、「—」は代表的な手段の記載がないことを示します。「研究開発」「実証」「商用化」「量産化」は政府資料の技術・事業フェーズですが、「海外展開」のみ本資料が政策手段を整理するために追加した支援工程です。

🔬 研究開発 🧪 実証 📦 商用化 ⚙️ 量産化 🌍 海外展開(政策手段)
💰 国内投資支援 研究開発税制 実証事業 — 設備・量産支援 —
🛒 需要創出・市場確保 — 社会実装支援 公共調達・アンカーテナンシー 価格差支援・オークション —
🏭 立地競争力強化 テストベッド 試験実証インフラ — 電力・用地・GX戦略地域 —
🌐 国際連携 国際共同研究 海外実証 国際標準化 — ODA・輸出金融・JETRO
厚い中薄いほぼ記載なし濃さはこの図の中での相対的な強弱で、他の図の濃さとは対応しません

濃いマスは左から右へ、投資支援 → 需要創出 → 国際連携と移っていきます。量産化の段だけは、投資支援・需要創出・立地の3つが同時に濃くなります。段階が進むほど、政策の役割が「作る支援」から「買う・売る支援」へ移るという設計です。
原文の5つの考え方のうち④「需要・市場の創出・形成と新たな技術の社会実装を重視する」が、この形に表れています。

詰まりどころ別の3つの型 独自分析

上のマトリクスは17分野全体をならした平均像です。実際の62項目は4類型を均等には使いません。投資が事業として成り立つには、作れて、売れて、手元に残る必要があります——この3つの関門のうち、どこで詰まっているかで、施策の先頭に来る型が変わります。

図|どの関門で詰まるかで、手段の重心が決まる
作れる売れない残る

需要創出が主役

技術はあるが買い手がいない

該当 量子通信量子センシング次世代型太陽電池グリーン鉄防災技術海洋無人機
先頭に来る施策 🛒 公共調達🛒 アンカーテナンシー
作れない売れる残る

供給力の再建が主役

市場はあるが国内で作れなくなっている

該当 造船3項目永久磁石港湾荷役機械感染症対応製品
先頭に来る施策 💰 設備投資支援🏭 人材確保
作れる売れる残らない

構造改革が主役

売れているのに手元に利益が残らない

該当 コンテンツ5分野
先頭に来る施策 成果報酬率の向上流通網の整備海賊版対策

構造改革の型だけは、4類型のどれでもない施策が柱になります——契約や流通の慣行を変える手段は、投資支援・需要創出・立地・国際連携のいずれにも収まりません。個票を読むときは、どの型が施策の先頭に来ているかを最初に見ることで、原文がその項目の主な障壁を何だと捉えているかがわかります。

根拠資料
  • 政府資料の技術・事業フェーズ(研究開発・実証・商用化・量産化)と、本資料が追加した「海外展開」支援工程との対応:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅱ章 p.3–39、第Ⅳ章 p.71–72 S01/内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04/内閣府「戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(案)参考資料」(2026-07-21) p.3 S28
  • 「海外展開」は政府の技術・事業フェーズではなく、本資料が政策手段を整理するために追加した工程である。
  • 4つの政策類型への分類、技術・事業フェーズとの掛け合わせ、手段の重さの3類型は本資料による再分類。政府予算はこの類型では編成されていない。
08

3-2. 17分野の政策パッケージ

政府原文に基づく 第Ⅱ-2章 p.4–39政府原文に基づく 第Ⅱ-1章 p.3–4
KEY MESSAGE 3-1の4つの政策手段が、62項目それぞれでどう組み合わされているかを示す。
原文は62項目すべてを「重要性 → 勝ち筋・方向性 → 主な目標 → 主な施策」という同一のフレームで書いており、政策手段はこの主な施策の中で具体化されている。
図|前提となるロードマップ

3-1で見た4つの手段は、どの項目にも同じ重さで実施されるわけではありません。
62項目に対する政策パッケージは、このロードマップの考え方を通じて検討されています。

1 民間投資を引き出す 大胆な政策で自律的・継続的な成長へ 2 両輪で支える ボトルネック解消+アクセラレーターの保有 3 経済安全保障 日本の自律性・不可欠性の確保を実現する 4 需要と実装を重視 事業フェーズを踏まえ、市場の創出と社会実装を前へ 5 相互連携 17の戦略分野×8つの横断課題をつなぐ

要約は本資料によるものです。番号と文言の対応は、原文の列挙順のとおりです。

図|原文が62項目すべてに用いている4点フレーム
ⅰ重要性なぜこの項目に投資するのか。市場規模の予測と、安全保障上の位置づけ。
ⅱ勝ち筋・方向性日本の何を強みとして、どこを取りに行くのか。
ⅲ主な目標いつまでに、シェア・金額・生産量で何を達成するか。
ⅳ主な施策政府が実際に何をするか。政策から民間投資への経路はここに書かれている。

17分野・64個票の中身は、A-3「62項目の個票」に置きました。
分野名を押すとその分野の位置づけと所属項目が開き、項目名・分野名で絞り込めます。

根拠資料
  • 17分野・64個票の4点フレーム(重要性・勝ち筋・方向性・主な目標・主な施策):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅱ-2章 p.4–39 S01
  • ロードマップ策定の5つの考え方・PDCAメカニズム・ポートフォリオ評価:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅱ-1章 p.3–4 S01
  • 本節は原文の記述順・表現をそのまま採録しており、要約・再分類・評価は加えていない。4点フレームが62項目すべてに例外なく用いられていることの確認は、本資料による全文照合による。
  • 各項目冒頭の連鎖帯に付く数値チップは、原文の当該フィールドから金額(兆円・億円)・年(20XX年/年度)・シェア(%・割)の表記を機械抽出して原文の文字列のまま表示したもので、本資料による要約・言い換え・分類は含まない。分野サマリの「最大の目標」は、その分野の目標に現れる金額を兆円換算で比較し最大のものを選ぶ機械的な処理による(億円は1兆円=10,000億円で換算)。「投資」は2-2の分野別再集計と同じ参考値であり、公式の分野別集計ではない。
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3-3. 8つの課題と17分野の関係

政府原文に基づく 第Ⅲ章 p.40–70独自整理 17分野との接続独自分析 欠落の判定
KEY MESSAGE 8つの横断課題は新しい成長分野ではない。17分野への投資を成り立たせるための共通条件である。

原文は、62項目のロードマップを作る過程で洗い出された、投資のボトルネックになり得る課題をまとめたものだと説明しています。政府原文に基づく

8つの課題の位置づけ 独自整理

図|17分野への投資を、8つの横断課題が下から支える

中央が戦略の本体、その下の濃い帯が土台となる8つの横断課題、上が到達点です。
課題を押すと、その課題が17分野のどこへつながるかが下に表示されます。
いちばん下は、複数の分野で取り合いになる資源です。

OUTCOME / 到達点
2040年度 250兆円国内民間設備投資(官民目標)
16項目に市場シェア目標うち1件は米国市場のシェア
実質賃金 年1%程度2029年度まで/所得への波及
▲誘発▲
CORE / 17分野・62項目への民間投資
🚨 危機管理投資自律性の確保
📈 成長投資不可欠性の確保
⏩ AX(加速装置)現場データを強みに
▲成立条件▲
FOUNDATION / 8つの分野横断的な課題
▲投入▲
CONTESTED / 分野間で取り合いになる資源(配分ルールの記載なし)
🔌 電力
👥 人材
🏞️ 用地・インフラ
⛏️ 重要鉱物
💴 財源

土台の8課題は新しい成長分野ではありません。これが崩れると中央の投資が成立しないという関係です。
この8課題の解決には5つの資源が必要ですが、どれに優先的に配るかは書かれていません。詳細は3-4に載せました。

17分野との代表的なつながり 政府原文に基づく

図|8つの課題は、17分野へどうつながるか

線は原文が明記する代表的な対応です。左の課題は、線が交差しないよう行き先の順に並べています(番号は原文の課題番号)。
左の課題を押すと、上の詳細パネル(17分野とのつながり)が切り替わります。
線にポインタを乗せると、対応する施策が出ます。

8つの横断課題 つながる先(原文の記述) 1 新技術立国・競争力強化 2 スタートアップ 3 金融(潜在力の解放) 4 人材育成 5 労働市場改革 8 サイバーセキュリティ 6 家事等の負担軽減・7 賃上げ環境整備は、特定分野との対応記述なし(労働供給・所得の全体条件) 17分野すべて 結節点/投融資方針/大学群/SCS評価制度 4つの課題が全分野を横断して支える ⑤ 防衛産業 SBIR・アジャイル調達・ファストパス ⑪ 創薬 / ⑨ マテリアル / ⑦ 海洋 ベンチャー支援・SBIR・無人機活用 建設、医療・介護の現場 17分野の外側の社会インフラを含む

「全17分野」へ向かう線が4本あります。
横断課題の多くは特定分野の施策ではなく、どの分野の投資にも先立つ共通条件として書かれています。

8課題それぞれの要点(原文 第Ⅲ章 p.40–70を圧縮したもの)は、A-4「8つの横断課題の個票」に置きました。

根拠資料
  • 8つの分野横断的課題と17分野への対応記述:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅲ章 p.40–70 S01
  • 課題別の該当ページ(原文 第Ⅲ章):新技術立国・競争力強化 p.40–44/スタートアップ p.45–47/金融を通じた潜在力の解放 p.48–51/人材育成 p.52–55/労働市場改革 p.56–60/家事等の負担軽減 p.61/賃上げ環境整備 p.62–66/サイバーセキュリティ p.67–70
  • 17分野との接続の表示と、複数分野で取り合いになる資源の指摘は本資料による整理。原文のKPIは課題ごとに閉じており、17分野との接続を測る指標はない。
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3-4. 分野をまたぐ資源の制約

政府原文に基づく 第Ⅱ-2・Ⅲ章独自整理 資源の競合
KEY MESSAGE 8つの課題は個別に解ける前提で書かれているが、電力・人材・用地・重要鉱物・財源の5つは分野をまたいで同じ資源を取り合う。原文はこの競合を認めながら、どちらに先に配るのかを書いていない。

前の2節は、8課題と17分野の関係(3-3)と、各課題の中身(A-4)でした。この節はそれらが同時に成り立つのかを見ます。原文が各項目で挙げるリソース制約を横断して集めると、同じ資源が複数の分野から要求されていることが分かります。

分野をまたいで取り合いになる5つの資源 独自整理

原文は分野ごとに必要な資源を書いていますが、それを横断して読むと、同じ資源を複数の分野が同時に要求していることが分かります。下の5つがそれです。分野ごとに閉じている制約(データ、初期需要、規制・認証、海外販路など)は、他分野と奪い合いにならないためここには入れていません。

🔌 電力

クラウド・データセンター(電力インフラの整備)、AI・半導体(計算基盤)、グリーン鉄(脱炭素電力)、GXケミカル、水素等、次世代革新炉、洋上風力(地域間連系線と系統用蓄電池)

👥 人材

ほぼ全分野。半導体設計人材、デジタル人材、高度セキュリティ人材、認証取得人材、造船人材、原子力人材、バイオ人材、医療機器創出人材、翻訳・ローカライズ人材、高度制作・企画人材

🏞️ 用地・インフラ

産業クラスター形成(工業用水、道路、鉄道、港湾施設)、データセンター、次世代型倉庫、射場・試験設備、修繕ドック

⛏️ 重要鉱物

永久磁石(重レアアース)、蓄電池(リチウム、ニッケル、コバルト)、革新的金属部素材(希少原材料)、低炭素金属部素材(アルミ、レアメタル)

💴 財源

『「強く豊かな日本」投資枠』に集約される。シーリングを設けず、経済安全保障上とくに重要な分野は特別会計で別枠管理し、つなぎ国債で規模を確保する。

5つのうち人材の「足りない」は、さらに細分化できる。
半導体は設計・研究・現場、造船は熟練技能と設計、サイバーは高度専門、コンテンツは制作・海外展開と、必要な職種が違います。必要人数・育成期間・代替可能性・海外人材の使いやすさも異なるため、対策は原文の職種まで戻って読む必要があります。

5つとも、原文は不足を認めていますが、分野が競合したときにどちらへ先に配るかは書いていません。

根拠資料
  • 各項目のリソース制約(電力・人材・用地・財源等):内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04/内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅱ-2章 p.4–39 S01
  • 横断課題側の対応(人材・電力・用地・財源):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅲ章 p.40–70 S01
  • 5つの資源が複数分野で取り合いになるという指摘と、どの資源をここに挙げるかの判断は、原文の記述をまたいで読んだ本資料による整理。原文はこれらを一覧として示していない。挙げた分野・品目は原文から拾った代表例であり、網羅的な集計ではない。
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3-5. 地域での実装制度

政府資料 地域未来戦略 p.6–13政府原文に基づく 地域への波及方針独自整理 要件マトリクス
KEY MESSAGE 地域未来戦略は、日本成長戦略の17分野への投資を、具体的な地域・インフラ・サプライチェーン・人材へ落とす実装制度である。大規模な戦略産業、都道府県主導の成長産業、地域資源型の地場産業の3類型を設けている。

日本成長戦略と地域未来戦略の役割分担 独自整理

日本成長戦略がどの産業・技術に投資するかを定め、地域未来戦略がどの地域で、誰を核に、どのインフラ・人材・企業群を組み合わせて実現するかを定めます。2026年7月21日に同日閣議決定された対の文書で、地域未来戦略の計画期間は2030年度までです。政府資料

図|What と Where・How の分業
What日本成長戦略17の戦略分野・62の主要な製品/技術等。2040年度までに官民投資370兆円超。何に投資するかを決める。
Where / How地域未来戦略3類型の計画(A・B・C)。計画期間は2030年度まで。どの地域で、誰を核に、何を組み合わせて実現するかを決める。

地域未来戦略は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に相当する広い戦略で、強い地域経済/豊かな生活環境/選ばれる地方の3本柱から成ります。日本成長戦略と直接つながるのは第3章第1節「強い地域経済の構築」です。本節では主にこの部分を扱い、残る2本柱は人材の定着条件として末尾で触れます。

日本成長戦略が地域について述べていること 政府原文に基づく

「戦略産業クラスター計画」に基づいた、17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点とする産業クラスターの形成を始め、「地域未来戦略」と連携し、地域において大胆な投資が更なる投資を呼ぶ環境を整備していく。

日本成長戦略側の地域記述はこの水準にとどまります。
制度の実体は地域未来戦略の側にあり、そちらで3類型の要件・記載項目・策定プロセス・KGIまで具体化されています。

地域未来戦略の3類型 政府資料

地域未来戦略では「多様な産業クラスターや地場産業を含む地域の産業の形成を進めるため、以下A〜Cのとおり3つの類型の計画を定め、それぞれの特性や課題に応じた支援策を講じていく」としています。
3類型は上下の階層ではなく、実現を目指す製品・サービスの内容、事業規模、広域性が異なる並列の受け皿です。政府資料

図|3類型の概要

地域未来戦略が3類型それぞれについて定めている内容を、文言は同戦略のまま短縮しています。
「内包」は、その類型では独立した要件になっていないものの、別の要件の中で扱われていることを指します(本資料の判定)。
群の見出しを押すと、その群の行が開きます。独自分析

項目 A戦略産業クラスター計画国・都道府県が策定 B地域産業クラスター計画都道府県知事が主導 C地場産業成長プラン市町村又は都道府県
何を対象に、どこを狙うか
対象 17の戦略分野に関連する企業の大規模投資 地域をけん引する企業・産業群 農林水産業、観光業、スポーツ産業、伝統的工芸品製造業、部品加工業等
目指す市場 世界をリードし得ること、又は世界水準での競争優位性 海外輸出による外貨獲得、又は国内市場での上位シェア 域外需要・海外需要の獲得
必須KGI 官民設備投資額/産業ニーズに即した人材育成数/付加価値増加額2040年目標 官民設備投資額/産業ニーズに即した人材育成数/付加価値増加額 付加価値増加額域外を含む雇用創出数など広域的KGIの追加も可
投資を呼び込むための条件
官民投資ロードマップとの整合 あり — —
国際的な競争優位性世界をリードし得ること あり — —
実現可能性補助金等の採択で投資実現の確度が保証 あり — —
一定の大規模投資 あり — —
地方ブロック有識者検討会の計画素案への明記 あり — —
インフラ・拠点整備との一体開発 あり — —
地域に落とすための条件
有望度域外から収益を獲得できるか — あり持続的に収益を獲得可能 あり付加価値向上・販路拡大
域内への波及域内取引額・売上額・雇用創出・賃上げ — あり あり目標値を設定
核となる企業・事業主体の存在 — あり あり
良質な雇用の創出・維持賃上げを含む あり 内包域内への波及 内包域内への波及
依存リスクの管理 — あり必須・高付加価値の部品・技術・工程を域内又は国内で調達 あり特定の事業主体への過度な依存の回避
費用対効果 — あり —
継続的な支援体制 — あり知事主導の伴走支援 あり相談窓口の設置
止めるための条件
KPI未達時の撤退基準 要件になし あり あり

止めるための条件だけ、Aに入っていません。撤退基準の設定が要件に入っているのはB・Cで、Aにはありません。
最大の投資が動く類型で、止める条件だけが要件から外れている
形です。
一方、Aは進捗確認の頻度が明示されており(半年に1回程度)、策定も国が主導します。独自分析

根拠資料
  • 3類型の位置付け・要件・記載項目・策定プロセス・KGI:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.6–14 S06
  • 計画期間(2030年度まで)と3本柱:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.2・第3章 S06
  • 地域への波及方針:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) S01
  • 3類型を共通の行に並べ直した表は本資料による再構成であり、地域未来戦略にこの表はない。「Aには撤退基準の要件がない」という対比も本資料の指摘。
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3-6. 計画実現に向けた政策手段

政府資料 地域未来戦略 p.14–25・51–52政府原文に基づく 10の手段独自整理 波及仮説独自整理 支援の並べ方
KEY MESSAGE 政策手段は、3類型ごとに「課題→対応方針→主な施策例」の形で具体化される。施策は同じ5本の柱(個別企業支援・成長資金・インフラ/環境整備・規制/制度改革・産業人材育成)が3類型すべてに置かれ、厚みが異なる。

この節では、地域未来戦略がA・B・Cの計画類型ごとに用意した支援施策と計画ごとに置くKGIと進捗確認の仕組みを確認します。

日本成長戦略の側も地域向けに10の手段(インフラ整備、拠点整備、企業版ふるさと納税、産業用地向け長期低利融資、GX戦略地域制度、国家戦略特区、スタートアップ調達など)を並列に挙げていますが、いずれも以下の地域未来戦略の支援施策と重複するため、地域未来戦略として整理します。政府原文に基づく

地域未来戦略の支援施策:3類型 × 5本の柱 政府資料

3-5で見たA・B・Cの受け皿に対して、国が何を用意するか。地域未来戦略は類型ごとに、同じ5本の柱で「課題 → 対応方針 → 主な施策例」を書いています。柱の並びと、課題・対応方針・施策例の文言は同戦略のままです。ただし柱の見出しは類型で異なる(3本目はAが「関連するインフラ及び拠点整備」、B・Cが「環境整備支援」)ため、共通の呼び名に置き換えています。

図|どの類型に、どの柱が厚いか

柱ごとの主な施策例の件数を並べました。件数は厚みの目安であって予算額ではありません。押すと、その類型の全文が下に開きます。

規制・制度改革はどの類型でも施策例が1件です。いずれも国家戦略特区制度等の活用で、地域ごとの中身は書かれていません。
一方でAはインフラ・拠点整備が9件と最も厚く、投資の受け皿づくりに重心があります。

柱(大項目)ごとに畳んであります。+を押すと、その柱の課題 → 対応方針 → 主な施策例が開きます。主な施策例は地域未来戦略の全件をそのまま出しています。施策例に付く型タグは3-1の4類型による本資料の機械分類で、地域未来戦略にこの分類はありません。

なお、各計画の策定主体は計画の最終年度に達成を目指すKGIを必ず設定し、B・CはKPI未達時の撤退基準もあわせて置くことになっています。
ただし個々の計画ごとの目標値は、計画が出そろうまで確認できません。政府資料

根拠資料
  • 計画別の必須KGI・独自KGIの追加可否:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.14 S06
  • 3類型+共通の支援施策(課題・対応方針・主な施策例の全文)とAの別枠措置:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.15–30 S06
  • Aの進捗確認(半年に1回程度)、B・Cの撤退基準:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.9・p.10・p.12 S06
  • 地元資本参画・利益再投資の任意記載:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.11・p.13(記載項目「現地化の取組」) S06
  • 戦略全体の上位KPI:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.51 S06
  • 地域向けの10の手段:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) S01
  • 支援施策を「3類型 × 5本の柱」に並べ直す整理と、柱ごとの施策例の件数を厚みの目安として示す表示は本資料による。件数は予算額ではない。施策例に付く型タグは3-1の4類型による機械分類で、地域未来戦略にこの分類はない。
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3-7. 地域への波及

政府資料 要件・KGI独自分析 弱い接続の判定
KEY MESSAGE 原文が描く「投資が更なる投資を呼ぶ」連鎖を5段階に開くと、必須KGIでつながっているのは起点のアンカー投資だけである。 以降の地域調達、人材の定着、3類型間の取引接続、利益の再投資は、いずれも要件にも必須KGIにも入っていない。 加えてKGIの算定方法が示されておらず、段階が進んでも政策の寄与として検証できない。

投資から次の投資までの経路 独自分析

制度は詳細まで具体化されましたが、投資が地域の所得と次の投資へ回るかどうかを担保する部分は、任意のままです。
それを5段階の波及仮説で整理しました。

図|5段階の波及仮説

これは制度が保証する連鎖ではなく、制度を成功させるために必要な波及仮説です。
2段目から先は破線——制度上の義務ではなく「起きてほしいこと」にとどまります。

  1. 1アンカー投資17分野に関連する企業の大規模投資
    記載あり
    日本成長戦略が投資額として書き、A・Bの必須KGI(官民設備投資額)で測る、制度と数字がつながっている唯一の段です。ただしCの必須KGIは付加価値増加額だけで、起点の投資額そのものを測る共通の指標がありません。つながっているといえるのは、3類型のうち2つまでです。しかもAの必須KGIは2040年目標で置くよう指定されている一方、地域未来戦略の計画期間は2030年度まで。半年に1回の進捗確認で追う先が、計画そのものが終わる10年後にあります。
  2. 2地域調達域内の企業から部材・サービスを買う
    必須KGIなし
    最大の投資が動くAに、域内調達の必須KGIがありません。地域に落ちる分を測る共通指標がない形です。
    さらに「域内」の範囲そのものが計画ごとに違います。クラスターの区域は地理的集積を想定しつつ、サプライチェーンが複数都道府県にまたがり密接不可分な場合は飛び地も含めて一体とみなせ、複数都道府県による共同策定も、政令指定都市による独自策定もできます。仮に域内調達を測ろうとしても、何を域内と呼ぶかが計画側の設計に委ねられています。政府資料
  3. 3人材育成・定着産業人材の育成とまちづくり
    育成数のみ
    育成は測り、定着は測りません。「産業ニーズに即した人材育成数」はA・Bの必須KGIに入りますが(Cは付加価値増加額のみ)、育成した人材がその地域にとどまったかを測る指標は、産業側の要件にはありません。定着の条件は残る2本柱(豊かな生活環境・選ばれる地方)の側にあり、クラスター計画の成否とは別に管理されています。
  4. 4関連企業の集積中堅・中小企業のサプライチェーン形成
    必須KGIなし
    A・B・C間の取引接続が義務化されていません。3類型は並列の受け皿として定義されており、Aの大型投資をBのサプライチェーンやCの地場産業へつなぐことは、要件にもKGIにも入っていません。集積が起きるかどうかは、計画どうしの自発的な連携に委ねられています。
  5. 5次の投資「大胆な投資が更なる投資を呼ぶ」
    任意記載
    地元資本の参画と利益の再投資は、任意記載です。域外企業を誘致する際の労働・技術の現地化ロードマップ、地元資本の参画方針、利益の再投資方針は、「ある場合には、留意事項として記載」とされ、必須項目ではありません。
日本成長戦略に記載あり必須KGIで測られていない

そして、5段階すべてに、もう一つ共通の問題があります。KGIは「当該計画による」官民設備投資額・付加価値増加額と定義されますが、計画がなくても生じた分をどう差し引くのか、対象範囲・名目/実質の別を含めて算定方法は示されていません。
仮に段階が進んだとしても、それを政策の寄与として検証できないということです。
調達が域外中心なら、工場が建っても連鎖は2段目で止まります。それを全国共通に検知する仕組みは、今のところありません。

人材を受け止める生活基盤 政府資料

産業クラスターの成立には、交通・医療・教育・住環境など、人材を呼び込み定着させる生活基盤も必要です。
地域未来戦略は「豊かな生活環境」(交通・物流、買物、医療・介護、行政サービス、インフラ)と「選ばれる地方」(若者・女性、教育、関係人口、移住、多様性)を残る2本柱として置き、医療・介護サービス等の地域の社会保障体制に満足している人の割合を66%(2026年)から70%(2030年)へ、東京圏以外で暮らすことを希望し実現できている若者の割合を40%から44%へ、といったKPIを設定しています。政府資料

本資料は日本成長戦略の分析を主題とするため、交通空白・買物困難、医療介護の個別施策、移住・関係人口、教育政策の個別メニューには立ち入りません。産業側の前提条件としてのみ扱います。

根拠資料
  • 3類型の要件・記載項目・必須KGI(弱い接続の判定材料):内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.6–14 S06
  • Aの進捗確認(半年に1回程度)、B・Cの撤退基準:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.9・p.10・p.12 S06
  • 地元資本参画・利益再投資の任意記載:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.11・p.13(記載項目「現地化の取組」) S06
  • 波及仮説の起点となる原文の一文:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) S01
  • 波及仮説の5段への分解と、各段が制度で担保されていないという判定は、地域未来戦略の要件・記載項目・必須KGIを突き合わせた本資料による評価。両戦略ともこれらを問題として挙げているわけではない。

Part 3の着地|成長戦略は、個別施策の数ではなく、施策間の依存関係を管理できるかで実行力が決まる。しかし、実行されたことと、政策によって成果が生まれたことは同じではない。次のPart 4では、成果と失敗を第三者が判定できるかを検証する。

PART 4|検証

どうなれば成功なのか

効いたかどうかを、外から判定できるのかを問います。
使う物差しは、原文が描く成長サイクルの7つのつなぎ目です。
4-1で原文が何を約束したかを確かめ、サイクルのどこが切れるか、4-2で外部の評価が同じ場所を指していることを確かめます。
4-3で、提言として切れているつなぎ目に何を置けばよいかを示します。

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4-1. 成長サイクルの切れ目

政府原文に基づく 第Ⅰ・Ⅳ章独自分析 つなぎ目の評価
KEY MESSAGE 政府支援から税収増までの成長サイクルには7つのつなぎ目があるが、原文のKPIで一部でも測れるのは、つなぎ目 II と III だけである。
入口(政府支援が投資を生んだか)と、所得から先の後半(循環が戻るか)は測れない。
投資額をいくら追っても、政策の効果は切り出せず、循環が回ったかどうかも判定できない。

原文が約束したこと 政府原文に基づく

原文が実行について約束したのは第Ⅳ章の5つです。4つは仕組みの話——5W1Hを踏まえた予算編成での具体化、日本成長戦略会議の下でのPDCA、分野横断的課題のKPIに沿ったPDCA(EBPMを含む)、「主要な製品・技術等」の見直し。残る1つだけ性格が違います。

また、民間の予見可能性を高める観点から、『「強く豊かな日本」投資枠』の予算措置は、複数年度の計画に基づくものを基本とし、併せて、その計画の進捗を定期的に確認し、投資誘発効果の薄い予算は柔軟に見直していくこととする。

原文は見直しの基準を「投資誘発効果」と自分で指名しました。
ならば確かめることは一つです——それは実際に測れるのか。独自分析

成長サイクルのうち、測れない箇所 政府原文に基づく独自分析

1-1で見た「戦略の成長サイクル」と、同じ7ステップです。ステップの間には7つの「つなぎ目」があり、どのつなぎ目も成り立つ保証はありません。ここでは、つなぎ目ごとに測れるかどうかを検証します。独自分析

図|戦略の成長サイクル

矢印の上のローマ数字(つなぎ目 I〜VII)を押すと、問い・原文の指標・62項目に降ろしたときの過不足・読み違えやすい点が下に表示されます。
図には2種類の丸があります。墨のアラビア数字1〜7=ステップ(原文が並べる7つの段)、弁柄のローマ数字 I〜VII=つなぎ目(段と段のあいだ)。本資料が検証するのは後者です。
つなぎ目の丸は、塗りつぶし=原文のKPIが一部でもある、破線の輪郭=原文にKPIがない、を示します。

1 政府が一歩前に出て 投資を大胆に促す 2 民間投資を誘発する 3 供給力を強化する 4 雇用と所得が増える 5 消費マインドが 改善する 6 事業収益が上がる 7 税率を上げずとも 税収が自然増 7つのつなぎ目は 測れるか ローマ数字を押すと詳細が出ます I II III IV V VI VII
1〜7 ステップ(原文の7段)I〜VII つなぎ目・KPIが一部だけあるI〜VII つなぎ目・KPIがない

測れる(塗りつぶし)のは II と III、測れない(破線)のは I と IV〜VII です。II・III にも指標はありますが、項目単位の供給力目標や横断課題側の賃金目標であり、その区間を測りきるものではありません。破線は「原文のKPIがその区間を測っていない」という意味で、そのすべてに新しい指標が要るわけではありません——IV〜VIは既存の公的統計と政府側の試算の公表で、VIIは止める基準の公表で埋まる区間です。逆に、塗りつぶしの II・III も区間を測りきってはいません。この後の処方で置き足す指標は、I・II・III の3か所に絞ります。
各つなぎ目の「62項目に降ろすと」は、同じ検証を官民投資ロードマップ(S04)=62項目の粒度で行ったものです。
結論、粒度を下げても、空く場所は変わりません。

根拠資料
  • 投資から税収までの好循環:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ章 p.1–3 S01
  • PDCA・5W1H・投資枠の見直し方針(「投資誘発効果の薄い予算は柔軟に見直す」を含む):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅳ-1〜3章 p.71–72 S01
  • マクロの試算(現状投影・成長実現ケース①②):内閣府「日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算」(2026-06-24) S05
  • 62項目の記載事項:内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04
  • 7つのつなぎ目への分解と、各つなぎ目が測れるかどうかの判定は、いずれも本資料による分析であり、原文の裏づけはない。政府はこの循環を切れ目のある構造としては提示していない。置き足すべき指標と止める引き金の提案は4-3にある。
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4-2. 外部からの評価

外部資料 産業界・市場・海外独自整理 論点別マトリクス政府原文に基づく 原文側の持ち札独自分析 結論の整理
KEY MESSAGE 国内主体(産業界・金融・経済同友会)は投資主導への転換を概ね肯定するが、海外論評は政策の方向自体について評価が分かれる。
国内で残る懸念は「資金供給の規律」「財源とつなぎ国債」「シーリング撤廃」の3つに集中する。

外部資料 この節は、外部の評価を先に見てから、原文側の反論と本資料の補足を並べます。
外部評価の出典は節末に載せました。海外の論評は、2026年7月21日の閣議決定より後に出たものだけを採っています。

論点別の評価マトリクス 独自整理

同じ主体でも論点によって評価が分かれるため、論点ごとに賛成か反対かを見ます。
セルを押すと、その主体が何を言っているか(発言・論拠)が下に表示されます。

外部の懸念が集まる4つの論点は、いずれも4-1で見た成長サイクルのつなぎ目に当たります。うち I・VI・VII は原文にKPIがなく、III も指標があるのは売上側だけです。
下の3つはサイクルの外側で、戦略の前提や外部環境をめぐる論点です。独自分析

図|どの論点で、誰が何を言い、原文はどう答えているか

7つの論点と5つの評価主体で整理し、いちばん右に原文の側にある記述を並べました。「—」は公開情報の範囲で言及を確認できなかったもので、反対や無関心を意味しません。右端の列だけは評価ではないので、記号を分けています。

論点4-1のどのつなぎ目か 産業界
経団連・日商・新経連
識者・シンクタンク
NRI・第一生命経済研
金融・市場 海外
メディア・7/21以降
経済同友会 政府自身の記述
成長サイクルのつなぎ目に当たる論点 ── 懸念はここに集まる
資金供給の規律つなぎ目 I 政府支援 → 民間投資 — 懸念 懸念 懸念 懸念 ◐ 宣言あり
中小企業・地域への波及つなぎ目 III 供給力 → 雇用と所得 両論 — — — — ◐ 施策あり
財源とつなぎ国債つなぎ目 VI 事業収益 → 税収 — 懸念 懸念 懸念 懸念 ◐ 宣言あり
予算のシーリング撤廃つなぎ目 VII 税収・成果 → 次の投資 肯定 懸念 懸念 — 懸念 ◐ 理由のみ
サイクルの外の論点 ── 戦略の前提や外部環境をめぐるもの
投資主導への転換サイクルの外 肯定 懸念 肯定 両論 肯定 ◐ 宣言あり
構造改革との関係サイクルの外 懸念 懸念 — 懸念 — ◐ 宣言あり
保護主義との線引きサイクルの外 — — — 懸念 — ○ 記述なし
肯定寄り両論懸念寄り言及を確認できず原文に該当する記述あり原文に記述なし

「資金供給の規律」「財源とつなぎ国債」「シーリング撤廃」の3行は、立場の違う主体がそろって懸念を示しています。ただし性質は一様ではなく、資金供給の規律は事前評価(配分基準・政策追加性)、財源とつなぎ国債とシーリング撤廃は財政管理(総額・債務管理)の論点です。
一方「投資主導への転換」に対する意見は割れており、方向性自体については国内主体は概ね肯定、海外論評は評価が分かれています。
海外の列は3媒体で評価が一致していません。Reuters Breakingviews は実行設計に条件付き(370兆円構想よりも対象を絞った柔軟な支援を支持し、配分の仕組みがないことを問題視)、Bloomberg は財政と物価の観点から条件付き(政府負担額と財源が不明で、足元の物価高対策が先ではないか)、SCMP は産業政策の思想そのものに反対・懐疑(政府による勝者選別と国単位の競争という方向自体が非効率だと批判)。投資主導への転換という方向自体についても、海外3媒体の評価は割れています。
また保護主義との線引きは、海外だけが指摘し、国内の4主体が誰も触れていない唯一の論点ですが、原文全73ページに「保護主義」「WTO」「通商規律」という語は一度も出てきません(通商への言及は、脚注が経済産業省「通商戦略2026」を参照する箇所にとどまります)。
なお外部の評価は、いずれも戦略全体の水準で行われています。62項目の個票や地域未来戦略の要件まで降りた評価は、公開情報の範囲では見当たりませんでした。

懸念が事前評価(配分基準・政策追加性)と財政管理(財源・総額管理)の2つの論点で止まるのは、評者の怠慢ではありません。原文が、判断に必要な数値をそもそも公表していないからです。
独自分析

根拠資料
  • 産業界:経団連 S12/経済同友会 S13/日本商工会議所 S14/新経済連盟 S15
  • 識者・シンクタンク:NRI 木内登英 S16/第一生命経済研究所 永濱利廣 S17
  • 金融・市場:日本経済新聞・野村證券 S18
  • 海外(いずれも2026-07-21の閣議決定後):Reuters Breakingviews S20/Bloomberg S21/South China Morning Post S22。分野別投資額の照合には Nikkei Asia S19(報道)を用いた
  • 「原文側の持ち札」として引用した記述・本資料の評価の材料:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 全体、とくに第Ⅱ章 p.3–39・第Ⅳ章 p.71–72 S01
  • 7論点×5主体のマトリクスの設計、各セルの評価(肯定/両論/懸念)の割り当て、論点ごとにどの原文記述を「持ち札」として当てるかの対応づけ、および懸念とA-1の情報ギャップとの対応づけは、すべて本資料による判断。持ち札の列に引いた文はいずれも原文の記述だが、どの論点への答えとして読むかは本資料の解釈である。政府の公式見解でも外部機関の評価でもない。外部評価はウェブ検索で得た内容にもとづく整理のため、発言の詳細は原典で確認されたい。
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4-3. 提言

独自分析 指標と引き金の提案
KEY MESSAGE 成長サイクルにおいて、指標(何を測るか)と引き金(どこまで下がったら止めるか)の2つを明らかにする。
これにより、「効いた」のか「効かなかった」のかを、政府の外にいる者が言えるようになる。

つなぎ目ごとの指標と引き金 独自分析

同じ成長サイクルに、指標(何を測るか)と、引き金(どこまで下がったら止めるか)を追加します。
詳細には、フィジカルAIを例にした場合の見え方も添えました。投資額10.5兆円で第10位、経済波及効果144.4兆円(いずれも2040年度まで、政府試算)。I・II・III・VI・VIIの5つのつなぎ目に原文の材料がある数少ない項目です(IV・Vは項目単位のロードマップの守備範囲の外で、どの項目にも材料がありません)。政府資料

図|つなぎ目に置くべき指標と引き金

ローマ数字(つなぎ目 I〜VII)を押すと、そのつなぎ目に置くべき指標・止める引き金・フィジカルAIでの見え方が下に表示されます。上の図と同じサイクルです。診断(何が測れないか)と処方(どう測り、いつ止めるか)を、同じ場所で対応させて読めます。

I〜III 指標を置き足す(本資料の提案)IV〜VII 既存の統計・試算・基準の公表で埋まる上の診断図とは丸の意味が違います

III は「売上 → 国内付加価値 → 雇用・賃金」の3段を1本の矢印に束ねたつなぎ目で(上の図の III の注記)、束ねられた段の数と引き金の数が一致します。売上には国内の初期需要と世界市場の2経路があり、そのどちらで切れるかが引き金3と4、売上が国内に残らずに抜けるのが引き金6です。
I・II の指標は原文にありません。III は両端に指標があり(売上は市場獲得額・導入量、賃金は横断課題側の目標)、間の国内付加価値が空いています。
IV〜VII は診断の図では破線(原文にKPIがない)ですが、戦略固有の指標を置き足す場所ではありません。IV・V の消費・収益と VI の税収は既存の公的統計で観測できるサイクルのマクロ側で、項目単位のロードマップの守備範囲の外にあります。VI で欠けているのは政策帰属の試算(純財政効果)、VII で欠けているのは止める基準——どちらも指標の新設ではなく、政府側の試算と基準の公表の問題です。
したがって足すべき指標は I・II・III の3か所に絞られます。

引き金と政策手段(62項目の施策を4つの型に整理した3-1の政策手段——💰国内投資支援・🛒需要創出・🏭立地競争力強化・🌐国際連携)を紐づけておくと、未達のときに畳むのは項目ではなく効かなかった手段になります。
つまり、畳み方は2段階です。引き金が1つ鳴ったなら、その引き金に紐づく手段を入れ替えるだけで項目はそのまま残します。複数の引き金に該当してはじめて、その項目から資源を引き上げ、その分野/項目への投資への失敗とみなし、別の伸びている項目へ回す。
個別項目を短期の売上で切るのではなく、ポートフォリオとして評価するという原文の方針は、そうやってはじめて動きます。

結び 独自分析

本資料は、投資額の大きさは、それ自体で戦略の強さを意味しないという前提から始めました。
問うべきは3つ——選択(どの分野に、何を狙って資金が寄せられているか)、実装(その投資が現場で実際に動く仕組みになっているか)、検証(成果と失敗を第三者が判定できるか)です。

読み終えてみると、3つとも同じ形で欠けていました。選択では、62項目に市場獲得の目標が課される一方、勝ち筋は定性的な記述にとどまり、その確からしさを測る指標が置かれていません(2-3)。実装では、電力・人材・用地・重要鉱物・財源を分野が取り合うことを原文自身が認めながら、どれを優先するのかが書かれていません(3-3)。検証では、成長サイクルの7つのつなぎ目のうち、原文のKPIで一部でも測れるのは2つだけです(4-1)。

目標も、投じる額も書かれています。空いているのは、その2つをつなぐ途中です。何を投じたかは分かる。何を目指すかも書いてある。その間で何が起きたのかだけが、外から見えません。だから本資料の提言は、途中に観測点を置くことになりました。3か所の指標追加と、それに紐づく6つの引き金です。

370兆円を投じたかどうかは、いずれ分かります。分からないままなのは、①そのうち何が政策によって生まれ、②どこに便益——売上のうち国内に残る付加価値と賃金——が残り、③何を途中で止めたかです。
この戦略を成功と呼べるかは、金額ではなく、その3つを説明できるかどうかで決まるのではないでしょうか。

根拠資料
  • 投資から税収までの好循環:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ章 p.1–3 S01
  • PDCA・5W1H・投資枠の見直し方針(「投資誘発効果の薄い予算は柔軟に見直す」を含む):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅳ-1〜3章 p.71–72 S01
  • マクロの試算(現状投影・成長実現ケース①②):内閣府「日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算」(2026-06-24) S05
  • 62項目の記載事項、フィジカルAIの投資額・経済波及効果・目標・施策:内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04
  • 7つのつなぎ目への分解、各接続が測れるかどうかの判定、つなぎ目ごとの観測点、6つの引き金、フィジカルAIへの当てはめは、いずれも本資料による分析・提案であり、原文の裏づけはない。政府はこの循環を切れ目のある構造としては提示していない。引き金に添えた政策手段は3-1の4類型による。結びで示した①②③への整理と、選択・実装・検証の3点についての総括も本資料による。
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A-1. 数値の定義と情報ギャップ

政府原文に基づく 第Ⅰ・Ⅳ章政府資料 概要・投資額・試算独自整理 数値の定義独自分析 合算不可・充足判定
KEY MESSAGE 投資額、市場予測、マクロ目標など各種数値の定義や算定方法が異なる。
そのため、単純に足したり、そのまま比べたりすることはできない。

混同しやすい3つの数値 政府原文に基づく

想定
370兆円超
62項目の官民国内投資Σ 2040年度までの累計 | 対象=62項目のみ | 「現時点で」の想定
目標
250兆円
国内民間設備投資の官民目標(年間)📅 2040年度の年間額 | 対象=日本全体 | 新たな官民目標
目標
180兆円
官民研究開発投資Σ 2026〜2030年度の合計 | 第7期科学技術・イノベーション基本計画

250兆円は、2040年度の国内民間設備投資(年間)についての官民目標です。「官民目標」とは、政府と民間が共同で達成を目指す目標という意味であり、公共投資と民間設備投資を合算した金額ではありません。独自分析

230兆円について。同じ7月21日の原文の中に、230兆円と250兆円が併存しています。第Ⅰ-3章は「2040年度には、国内民間設備投資額は年間230兆円、GDPは1,100兆円に迫る」という6月24日の試算(成長実現ケース)を引き、第Ⅲ章のKPIは「2040年度250兆円の国内投資目標」を掲げます。脚注はこの250兆円を、2025年度125兆円の民間企業設備投資額(名目)に対する目標として説明しています。対象範囲が違うのではなく、試算と政策目標という数値の性格が違います。どちらかが古い数字というわけではないため、本資料は目標値として250兆円を用い、試算値を指すときは230兆円と明記します。

時点も単位も定義も、そろっていない 独自分析

そろっていないのは、次の5点です。

  • 時点予測時点が2030年から2050年まで混在する
  • 通貨円建てとドル建て(次世代型地熱の年間2,000億ドル等)が混じり、為替前提は書かれていない
  • 指標の種類「重要性」欄に、市場規模(植物工場55兆円)、経済効果(バイオものづくり165兆円)、導入ポテンシャル(次世代型太陽電池 海外約500GW)が同居する
  • 推計の出所多くが「〜との予測もある」という書き方で、推計主体も算定方法も示されていない
  • 目標値の定義世界シェア/国内市場/売上高/導入量が混在し、さらに再掲2件が二重計上になる

したがって、62項目の数値どうしは合算も比較もできません。
唯一の例外はコンテンツ5分野です。単位・時点・定義がそろい、合計20.2兆円は産業全体目標の20兆円とほぼ一致します。

官民投資額・経済波及効果の定義 政府資料独自分析

💴 官民投資額

政策策定上の推計であり、確定予算と企業コミットメントを集計した値ではない。

  • 推計担当省庁が主要企業・団体へ投資予定をヒアリングし、将来部分は市場・投資の伸び率で補外
  • 仮定官の投資は、研究開発→実証→商品化→量産化の発展段階を機械的に想定
  • 単位主に2040年度までの15年間の累計フロー。主として国内分。未算定項目と将来の追加があるため「370兆円超」
  • 重複全体の合計時は62項目間の重複を排除。再掲のグリーン鉄4.2兆円、バイオ医薬品・再生医療等20.8兆円は二重計上しない
  • 未公表官/民の内訳、年度別投資額、実施主体別投資額、確定/推計の区分は原則非公表

🌊 経済波及効果

産業連関分析による試算。市場規模、売上、GDP押上げの純効果、政府支援の追加効果とは異なる。

  • 手法官民投資額と生産増加額を入力し、一次波及・二次波及を算出
  • 重複同一の供給網・需要を複数項目が含み得るため、項目間で重複し得る
  • 禁止したがって、62項目の経済波及効果は合算しない
必須注意書き 官民投資額は、官民の確定コミット額ではない。
経済波及効果は市場規模・売上・GDP純増・政策追加効果ではない。
項目間で重複し、期限も異なるため、全項目の単純合算値を日本成長戦略全体の投資総額・効果総額として使用することはできない。

情報ギャップの判定 独自分析

論点は任意に並べたものではなく、2つの出所から機械的に採っています。

  • A|原文が62項目すべてに欄を設けている項目(9つ)。官民投資ロードマップの個票が全項目共通で用意している記載欄と、政府参考資料が全項目に付している発展段階を、そのまま論点にしたものです。政府資料
  • B|個票にそもそも欄がない項目(8つ)。4-1で見た成長サイクルの7つのつなぎ目を外から確かめようとしたときに要るのに、個票のどの欄にも対応しないものを挙げました。

判定は単純な「記載あり/なし」ではなく、充足(62項目について比較可能な形で原文を確認できる)、部分充足(記載はあるが定義・粒度・基準が不統一、または推計前提が不足)、未公表(原文に確認できず、本資料でも根拠をもって補えない)の3区分です。Aに未公表が1つもないのは当然で、欄がある以上は何かが書かれているからです。見るべきは、Aで部分充足が付いた行——欄はあるが横に並べて比較できない行——と、Bの並び方です。

論点 判定 具体的な記載内容
A|原文が62項目すべてに欄を設けている項目 個票のフォーマットにある欄を、そのまま論点にした
62項目の目標 充足 獲得市場・戦略目標は全項目に記載。ただし指標・期限は統一されていない
日本の強み・勝ち筋 充足 全項目に定性記載。競争優位として実証されたかは別途検証が必要
構築すべき機能 充足 研究開発、製造、需要、実装、海外展開等の必要機能を確認可能
主な投資内容 充足 原則全項目に記載。分類別金額は原則不明
投資促進上の課題 充足 リソース制約と不確実性を項目別に確認可能。分類粒度は不統一
政策パッケージ 充足 項目別に記載。政策名、担当主体、予算額、実施期限の粒度は不統一
発展段階 充足 政府参考資料で全62項目を研究開発・実証・商用化・量産化の4段階に分類。ただし、政府は各フェーズを一定の幅を持つものとして見る必要があると注記している
官民投資額 部分充足 原則数値あり。ただしLNG運搬船は未確定、艦艇は2026年度予算のみ、期限が混在
経済波及効果 部分充足 原則数値あり。ただしLNG運搬船・艦艇は未確定。項目間重複があり合算不可
B|個票にそもそも欄がない項目 7つのつなぎ目を外から確かめるのに要るが、対応する欄がない
官/民の投資内訳 未公表 総額のうち政府・企業がそれぞれ負担する額は原則不明。つなぎ目 I(政府投資→民間投資の誘発)を測るには、分子と分母を分ける必要がある
政策の追加性 未公表 支援がなければ起きなかった投資額、投資誘発率、反実仮想は不明。つなぎ目 Iで、支援がなくても起きた投資と区別できない
企業別コミットメント 未公表 どの企業がいくら投資を確約したかは不明。つなぎ目 Iの民間側が、意向なのか確約なのか判別できない
年度別投資計画 未公表 累計額はあるが、毎年度の執行曲線は不明。どのつなぎ目についても、いつ時点で判定するかが置けない
政策別予算・担当主体 部分充足 一部制度は特定できるが、62項目を統一した予算・責任者表はない。効果が出ても、どの政策の結果かを帰属させられない
中間KPI 部分充足 一部に能力・導入量等の目標があるが、投資から最終目標までをつなぐ共通KPIは不足。つなぎ目 II〜V(供給力・雇用・所得・消費)が空白になる
純効果 未公表 雇用、賃金、税収、国内付加価値、輸入増を控除した純効果は不明。つなぎ目 III・VI・VII(所得・収益・税収)を、他要因と分けて測れない
見直し基準 未公表 未達時の縮小・停止・重点変更・予算再配分基準は不明。つなぎ目が切れていると分かっても、次の一手が決まっていない

Bの8つは均等に散っているわけではなく、つなぎ目 I(政府投資→民間投資の誘発)に3つが集中しています。投資を促すという戦略の起点そのものが、外から確かめにくい形になっているということです。

表で「未公表」とした行のうち、政策の追加性・純効果・見直し基準は、政府が公表しない限り誰にも評価できないものです。成長サイクルのどのつなぎ目が切れているかは4-1に、外部評価との重なりは4-2にまとめています。

項目別の官民投資想定額の機械可読な一覧(全64個票・S04頁付き)はA-3のマスター表に統合しました。引用・再利用の際はそちらを参照してください。

根拠資料
  • 370兆円超・230兆円・250兆円・180兆円の定義:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ章 p.1–3、第Ⅳ章 p.71–72 S01/内閣官房「日本成長戦略 概要」(2026-07-21) S02/内閣府「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026-06-24) S03/内閣府「日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算」(2026-06-24) S05
  • 設備投資の系列(実質・季節調整と名目):内閣府「国民経済計算」
  • 官民投資額・経済波及効果の算定方法:内閣府「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026-06-24) S03/内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04/経済財政諮問会議・日本成長戦略会議 合同会議 議事要旨(2026-06-24) S26
  • 発展段階(技術・事業フェーズ)の分類:内閣府「戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(案)参考資料」(2026-07-21) p.3 S28。定義は2-3に置いている
  • 62項目の個票(充足判定の対象):内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04
  • 4つの数値の対比、合算不可の判定、充足/部分充足/未公表の3区分判定は本資料による横断整理。分野別集計・ランキング・集中度は2-2へ移設。
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A-2. 日本成長戦略の構造

政府原文に基づく 第Ⅰ・Ⅱ・Ⅳ章独自整理 3段への分解

政府が用意した仕組みを、投入・実行の単位・到達点の3段に並べ直したものです。
本資料の見取り図ははじめににあります(「選択・実装・検証」の3段。この図とは切り口が違います)。

投入・実行の単位・到達点 政府原文に基づく独自整理

図|日本成長戦略の全体像

左の3つの投入が中央の17分野・62項目を駆動し、右の到達点へつながります。
この到達点には、成長サイクルの実現以外にも、4つの定量目標があります。

INPUT / 投入 EXECUTE / 実行の単位 OUTCOME / 到達点 4つの政策手段 投資支援・需要創出・立地・国際連携 3類型の産業クラスター計画 地域未来戦略と連携して立地を整える 8つの分野横断的な課題 技術・資金・人材の3群で詰まりを外す 17分野・62の製品・技術 それぞれに官民投資ロードマップ 🚨 危機管理投資 自律性の確保 ― 供給途絶に備える 📈 成長投資 不可欠性の確保 ― 世界から求められる ⏩ AX(加速装置) 現場データを強みに両輪を加速する 成長サイクルの実現 投資 → 供給力 → 雇用と所得 → 消費 → 収益 → 税収 → 再投資 原文が最終的に目指す状態(金額ではない) 1-1 の成長サイクル 370兆円超 62項目の官民国内投資(2040年度まで累計・想定) 250兆円 国内民間設備投資の官民目標(2040年度・年間) 1,100兆円に迫る 名目GDPの試算(2040年度) 180兆円 官民研究開発投資(2026〜2030年度合計)
根拠資料
  • 図中の要素と文言(4つの政策手段・3類型のクラスター計画・8つの横断課題・危機管理投資/成長投資/AX・4つの定量目標):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅰ章 p.1–3、第Ⅱ章 p.3–39、第Ⅳ章 p.71–72 S01/内閣官房「日本成長戦略 概要」(2026-07-21) S02
  • 2040年度の名目GDP試算(1,100兆円に迫る):内閣府「日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算」(2026-06-24) S05
  • 3類型の産業クラスター計画:内閣官房「地域未来戦略」(2026-07-21) 本文 p.6–13 S06
  • 投入 → 実行の単位 → 到達点という3段への分解と、どの要素をどこに置くかは本資料の整理であり、原文にこの図はない。
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A-3. 62項目の個票

政府原文に基づく 第Ⅱ章 p.4–39政府資料 ロードマップ個票

62の「主要な製品・技術等」(原文のPDF上は再掲2件を含む64個票)を、1つの様式にまとめた一覧です。金額・期限などの数値と、原文の4点フレームを、同じカードの中に収めています。
分野の狙いは本文の2-1、資金の配分は2-2、4点フレームの構造そのものは3-2にあります。

分野を選ぶと、位置づけ・ボトルネック・代表KPIと、対応する製品・技術の個票が下に表示されます。
各個票には官民投資額・経済波及効果(いずれも政府試算)とロードマップの該当ページを付記しました。

個票は情報の揃い方が均一ではありません。標準形のほかに、投資額・経済波及効果が「今後精査」のもの(例:LNG運搬船)、他計画と包含関係を持つもの(例:防災技術)があります。集計・グラフ上の扱いは2-2の「例外値の扱い」にまとめています。

個票の読み方 政府原文に基づく

分野名を押すと、その分野の位置づけと所属項目が開きます。
各項目は、数値帯(官民投資額・経済波及効果・期限・ロードマップ頁)に続けて、原文の4点フレーム(重要性/勝ち筋・方向性/主な目標/主な施策)を表現のまま載せています。

数値チップは原文にある金額・年限・シェアの表記を機械抽出したもので、チップにカーソルを合わせると、その数値が置かれている原文の一文が出ます。
分野名の右の投資は2-2の分野別再集計(本資料による機械集計の参考値)、最大の目標はその分野の目標のうち金額が最大のものを機械的に選んで示したものです。
グリーン鉄とバイオ医薬品・再生医療等製品等は原文が2分野に掲載しているため、2回目は「再掲」として内容を繰り返していません。

施策カードの型タグは3-1の4つの政策類型(国内投資支援需要創出・市場確保立地競争力強化国際連携)です。どの施策がどの手段かは本資料による機械分類で、原文にこの分類はありません。施策文に含まれる語(例:「公共調達」→需要創出・市場確保、「用地」→立地競争力強化)で判定し、語が一致しない施策にはタグを付けていません(203件中30件)。タグにカーソルを合わせると、判定に使った原文の語が出ます。分野名の右の手段は、その分野の施策が使っている手段の一覧です。独自分析

17分野・64個票(ユニーク62項目)

全62項目マスター表 政府資料

64個票(ユニーク62項目)の全一覧。項目名・分野名で絞り込めます。

ID 分野 主要な製品・技術等 S04頁 官民投資額
(兆円)
経済波及効果
(兆円)
期限 注記
R01 ① AI・半導体 フィジカルAI(特にAIロボット) p.4-8 10.5 144.4 2040年度
R02 ① AI・半導体 フィジカル・インテリジェント・システムの中核を担う半導体 p.9-13 68.0 443.3 2040年度
R03 ① AI・半導体 バーティカルAI(領域特化型AI) p.14-18 23.1 222.0 2040年度
R04 ② デジタル・サイバーセキュリティ データプラットフォーム p.19-23 0.9 2.2 2035年度
R05 ② デジタル・サイバーセキュリティ セキュリティの確保された政府・地方公共団体のAX/DX基盤 p.24-28 7.4 10.9 2035年度
R06 ② デジタル・サイバーセキュリティ AI時代に対応した先進的サイバーセキュリティ製品・サービス p.29-33 1.0 3.3 2035年度
R07 ② デジタル・サイバーセキュリティ クラウド・データセンター、蓄電池 p.34-38 32.7 107.1 2035年度
R08 ② デジタル・サイバーセキュリティ クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤 p.39-43 5.2 15.2 2040年度
R09 ② デジタル・サイバーセキュリティ 自動運転技術 p.44-48 8.2 187.3 2040年度
R10 ③ 情報通信 オール光ネットワーク(APN : All-Photonics Network) p.49-53 5.9 36.2 2040年度
R11 ③ 情報通信 海底ケーブル p.54-58 2.4 16.2 2040年度
R12 ③ 情報通信 次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク、5G/Beyond 5G(6G)等) p.59-63 20.5 223.5 2040年度
R13 ④ 量子 量子コンピューティング p.64-68 10.3 127.5 2040年度
R14 ④ 量子 量子通信・ネットワーク p.69-73 1.5 8.5 2040年度
R15 ④ 量子 量子センシング p.74-78 1.4 12.5 2040年度
R16 ⑤ 防衛産業 小型無人航空機 p.79-83 0.4 5.6 2040年度
R17 ⑤ 防衛産業 艦艇 p.84-88 0.34※ — 2026予算 2026年度予算。累計比較不可
R18 ⑤ 防衛産業 デュアルユース技術 p.89-93 4.3 117.7 2040年度
R19 ⑥ 航空・宇宙 民間航空機(次期単通路機・次世代航空機) p.94-98 3.5 16.1 2040年度
R20 ⑥ 航空・宇宙 無人航空機 p.99-103 0.3 5.6 2040年度
R21 ⑥ 航空・宇宙 空飛ぶクルマ p.104-108 0.4 1.9 2040年度
R22 ⑥ 航空・宇宙 ロケット・射場 p.109-113 2.3 5.5 2040年度
R23 ⑥ 航空・宇宙 人工衛星・サービス p.114-118 6.4 30.6 2040年度
R24 ⑥ 航空・宇宙 月面探査・低軌道技術 p.119-123 5.6 24.1 2040年度
R25 ⑦ 海洋 海洋無人機(海洋ドローン) p.124-128 1.2 9.4 2040年度
R26 ⑦ 海洋 海洋状況把握(MDA) p.129-133 1.2 8.7 2040年度
R27 ⑦ 海洋 革新的海底開発技術・システム p.134-138 0.9 2.2 2040年度
R28 ⑧ 造船 次世代船舶 p.139-143 1.0 9.7 2034年度
R29 ⑧ 造船 船舶修繕 p.144-148 0.1 0.3 2035年度
R30 ⑧ 造船 LNG運搬船 p.149-153 — — — 今後精査(未確定)
R31 ⑨ マテリアル(重要鉱物・部素材) 永久磁石 p.154-158 0.2 3.2 2040年度
R32 ⑨ マテリアル(重要鉱物・部素材) グリーン鉄 p.159-163 4.2 10.4 2040年度 ⑫にも再掲
R33 ⑨ マテリアル(重要鉱物・部素材) 革新的金属部素材 p.164-168 0.3 3.3 2040年度
R34 ⑨ マテリアル(重要鉱物・部素材) 低炭素金属部素材(鉄鋼以外) p.169-173 0.7 6.7 2040年度
R35 ⑨ マテリアル(重要鉱物・部素材) 一次原料(鉱石等)及び二次原料(リサイクル材等の循環資源)からの製錬・分離精製、解体選別技術 p.174-178 6.3 1.1 2040年度
R36 ⑨ マテリアル(重要鉱物・部素材) AI等を活用した複合新素材 p.179-183 5.2 14.4 2040年度
R37 ⑩ 合成生物学・バイオ バイオものづくり p.184-188 12.8 66.7 2040年度
R38 ⑩ 合成生物学・バイオ バイオ医薬品・再生医療等製品等 p.189-193 20.8 174.9 2040年度 ⑪にも再掲
R39 ⑪ 創薬・先端医療 ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品(医薬品、再生医療等製品) p.194-198 23.4 162.1 2040年度
R40 ⑪ 創薬・先端医療 感染症対応製品 p.199-203 7.2 29.2 2040年度
R41 ⑪ 創薬・先端医療 バイオ医薬品・再生医療等製品等(※合成生物学・バイオ②と同じ) p.204-208 20.8 174.9 2040年度 再掲(合計に含めない)
R42 ⑪ 創薬・先端医療 革新的デバイス(AI、ロボティクス等)を活用した先端医療 p.209-213 11.6 105.8 2040年度
R43 ⑪ 創薬・先端医療 ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス p.214-218 1.1 17.3 2040年度
R44 ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX 次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等) p.219-223 4.1 22.9 2040年度
R45 ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX 水素等 p.224-228 6.2 85.3 2040年度
R46 ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX グリーン鉄(※マテリアル②と同じ) p.229-233 4.2 10.4 2040年度 再掲(合計に含めない)
R47 ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX 次世代型地熱 p.234-238 1.0 2.8 2040年度
R48 ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX 洋上風力 p.239-243 5.1 17.3 2040年度
R49 ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX 次世代革新炉 p.244-248 5.0 11.1 2040年度
R50 ⑫ 資源・エネルギー安全保障・GX GXケミカル p.249-253 3.2 75.5 2040年度
R51 ⑬ フュージョンエネルギー フュージョンエネルギー p.254-258 3.1 9.4 2040年度
R52 ⑭ 防災・国土強靱化 防災技術 p.259-263 2.6 14.5 2030年度 国土強靱化 約20兆円強の内数は別(足さない)
R53 ⑮ 港湾ロジスティクス 港湾荷役機械 p.264-268 0.4 1.0 2040年度
R54 ⑮ 港湾ロジスティクス サイバーポート(港湾物流DX) p.269-273 0.2 0.4 2040年度
R55 ⑮ 港湾ロジスティクス 次世代型倉庫 p.274-278 0.6 1.4 2040年度
R56 ⑯ フードテック 植物工場 p.279-283 4.6 36.8 2040年度
R57 ⑯ フードテック 陸上養殖 p.284-288 2.9 47.1 2040年度
R58 ⑯ フードテック 食品機械 p.289-293 1.2 18.8 2040年度
R59 ⑯ フードテック 新規食品 p.294-298 1.0 18.8 2040年度
R60 ⑰ コンテンツ ゲーム p.299-303 24.5 191.4 2033年度
R61 ⑰ コンテンツ アニメ p.304-308 3.3 93.5 2033年度
R62 ⑰ コンテンツ マンガ p.309-313 1.6 17.2 2033年度
R63 ⑰ コンテンツ 音楽 p.314-318 3.0 15.0 2033年度
R64 ⑰ コンテンツ 実写 p.319-323 1.3 8.9 2033年度

注1:PDF上の掲載単位は64個票だが、グリーン鉄(R32・R46)とバイオ医薬品・再生医療等製品等(R38・R41)は同一項目の重複掲載であり、ユニーク項目数は62。
注2:艦艇(R17)は2040年度までの累計投資額ではなく、2026年度予算約3,400億円を記載。経済波及効果は戦略三文書改定の議論を踏まえて検討とされ、数値未公表。
注3:LNG運搬船(R30)は投資額・経済波及効果とも「関係者間での検討を引き続き進めつつ、今後精査」。
注4:防災技術(R52)の2.6兆円に加え、第1次国土強靱化実施中期計画に基づく2030年度までの官民約20兆円強の内数が想定される。2.6兆円と20兆円強を足し合わせない。
注5:期限は2030・2033・2034・2035・2040年度が混在する。金額の大小は年率換算した投資強度を意味しない。
出典:政府資料|官民投資ロードマップ(2026-07-21)各個票[S04]。投資額・経済波及効果はいずれも政府試算(確定コミットではない)。

根拠資料
  • 分野別の位置づけ・製品/技術・ボトルネック・政策手段・KPI:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅱ-2章 p.4–39 S01/内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04
  • 分野別の該当ページ(原文 第Ⅱ-2章):AI・半導体 p.4–5/デジタル・サイバーセキュリティ p.6–8/情報通信 p.9–10/量子 p.11–12/防衛産業 p.13–14/航空・宇宙 p.15–17/海洋 p.18–19/造船 p.20/マテリアル p.21–24/合成生物学・バイオ p.25/創薬・先端医療 p.26–27/資源・エネルギー安全保障・GX p.28–31/フュージョンエネルギー p.32/防災・国土強靱化 p.32–33/港湾ロジスティクス p.33–34/フードテック p.35–36/コンテンツ p.37–39
  • 62項目の個票(目標・投資額・経済波及効果・該当ページ):内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21)全324ページ S04
  • 分野ピッカーの「主な政策目的」欄とマスター表の注記は本資料の整理。項目数の合計64のうち2件は再掲であり、実数は62。
  • 4点フレーム(重要性・勝ち筋・方向性・主な目標・主な施策):内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) 第Ⅱ-2章 p.4–39 S01
  • 4点フレームの部分は原文の記述順・表現をそのまま採録しており、要約・再分類・評価は加えていない。個票冒頭の数値帯は官民投資ロードマップの公表値で、本資料の再計算ではない。
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A-4. 8つの横断課題の個票

独自整理 要点へ圧縮

8つの分野横断的な課題それぞれの要点です。課題と17分野の関係は本文の3-3に、課題どうしが同じ資源を取り合う点は3-4にあります。

図|原文が8課題すべてに用いている構成
1現状と課題いま何が足りていないのか。数値による現状の診断。
2対応の方向性どういう考え方で解くのか。課題の位置づけ。
3目標(KPI)いつまでに、どの指標をどこまで動かすか。
4講ずるべき施策パッケージ政府が実際に何をするか。17分野側の「主な施策」に対応する部分。

以下は、この4点の枠組みはそのままに、中身を本資料が要約したものです。現状と課題・対応の方向性・各施策区分は3点以内に、目標(KPI)は年限・指標・目標・現状に分解しています。課題の並び順と施策パッケージの区分は原文どおりです。

8つの課題の要点 独自整理

課題名を押すと中身が開きます。見出しの下の1行は、その課題を1文で表したものです。

8課題・施策パッケージ31区分
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A-5. よくある質問

政府原文に基づく政府資料 関連資料独自分析 質問の選定
KEY MESSAGE 本文の結論をよくある質問の形で取り出した。
10問のうち4問は「公表されていない」で終わる。それこそがこの戦略の現在地である。

質問を押すと答えが開きます。答えはいずれも本文の該当箇所へ飛べます。

日本成長戦略の370兆円超に、官と民の内訳は公表されていますか。

公表されていません。内閣府の算定方法の記述は、企業・団体へのヒアリングと伸び率による補外という積み上げ方は示していますが、政府負担分と民間負担分の別は示していません。このため財政レバレッジは評価できません。該当箇所へ

370兆円超は名目値・実質値のどちらですか。基準年はありますか。

370兆円超は、2026年度から2040年度までの15年間の累計です。政府はこれが名目値なのか実質値なのかを書いていません。実質値なら必要になる価格基準年も、デフレーターの種類も、算定方法を説明した資料まで当たりましたが記載がありませんでした。
このため2つのことができません。ひとつは、15年分を積み上げた金額を現在の物価に直すこと。もうひとつは、名目と明記されている数字——2040年度の国内民間設備投資の官民目標250兆円や、同年度の名目GDP試算1,100兆円——と並べて大小を論じることです。
なお後者は、仮に名目/実質がはっきりしても成り立ちません。370兆円超は15年の累計、250兆円と1,100兆円は単年の数字で、足し合わせている期間が違うからです。該当箇所へ

62項目それぞれの官民投資想定額は、どこに公表されていますか。

戦略本文にはありません。内閣府「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026年6月24日、経済財政諮問会議・日本成長戦略会議 合同会議 提出資料/S03)に62項目別の金額があります。最大はAI中核半導体68.0兆円、次いでクラウド・データセンター・蓄電池32.7兆円、ゲーム24.5兆円、ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品(医薬品、再生医療等製品)23.4兆円、バーティカルAI23.1兆円です。該当箇所へ

投資額はどの程度、特定の項目に集中していますか。

公表額を単純合算した参考値では、上位10項目で247.9兆円。数値既知61項目の単純合計395.64兆円の62.7%にあたります(政策間の重複を含む単純合算に対する参考値)。公式の「370兆円超」は重複を除いた集計値のため、単純合算を分子とした構成比は計算していません。該当箇所へ

日本の潜在成長率は主要先進国と比べて高いのですか。

内閣官房の基礎資料では、日本の潜在成長率は2025年で0.6%、1991年の3.3%から低下しています。
同資料が載せる国際比較は潜在成長率ではなく潜在GDPの水準指数(1991年=100)で、2024年は米国229、英国183、フランス167、ドイツ155に対し日本は134。該当箇所へ

支援を打ち切る基準は示されていますか。

示されていません。「投資誘発効果の薄い予算は柔軟に見直す」という方針はあるが、薄いとは何かの数値基準がなく、縮小・中止・再配分の閾値も判断主体も書かれていません。該当箇所へ

2040年に人材はどれだけ不足しますか。

経済産業省の推計では、就業者数は2022年の約6,700万人から2040年に約6,300万人へ約400万人減少。総数では大きな不足は生じないと置くが、AI・ロボット等利活用人材が340万人、現場人材が260万人、理系人材が120万人不足する一方、事務職が440万人、文系人材が80万人余剰になります。該当箇所へ

地域別に人材の過不足はどうなりますか。

関東(一都三県)が193万人の余剰となる一方、関東(一都三県以外)89万人、東北53万人、北海道41万人、九州31万人、四国6万人が不足します。中部・近畿・中国は総数では余りますが、余るのは事務職で専門職と現場人材は不足します。該当箇所へ

この戦略の成否は、外部から判定できますか。

現時点では判定できません。原文が描く成長サイクルの7つのつなぎ目のうち、I(政府支援→民間投資)と、IV(所得→消費)から VII(税収→次の投資)までには原文のKPIがなく、II(民間投資→供給力)と III(供給力→雇用と所得)にも、項目単位の供給力目標と売上側の指標があるだけです。政策の追加性・国内への波及・純財政効果・止める基準を、外から確かめられないためです。該当箇所へ

この戦略で、自社は何を見ておくべきですか。

まず自社の事業が62項目のどれに当たるかを特定します。投資額も年限目標も政策パッケージも項目単位で設計されているため、17分野の単位で見ると自社に効く支援が見えません。
そのうえで見るべきは4つ。第一に公共調達とアンカーテナンシーの具体化で、政府が初期需要を作ると明記している以上、支援の本体は補助金よりも調達側にある。第二に毎年度の見直しで自社の項目が残るかどうかで、「投資誘発効果の薄い予算は柔軟に見直す」とあるが基準が示されていないため、見直し結果がどう公表されるかが最初の判断材料になる。第三に電力・人材・用地の競合で、17分野を同時に走らせる前提で書かれており、制約が効いたときの優先順位は決まっていません。第四に地域クラスターの制度設計で、立地と設備投資の判断に直結します。3類型の要件・KGI・支援施策は公表済みですが、個々の計画とその目標値はまだ出ていません。自社の地域でどの計画が認定されるかが、最初に見る材料になります。該当箇所へ

根拠資料
  • 回答の事実部分:本文各節の根拠資料に同じ。一次資料は巻末の出典一覧を参照
  • 問いの選定、および「公表されていない」という断定は本資料による判断。政府の公式見解ではない。
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A-6. 用語集

政府原文に基づく独自分析 語の選定と説明
KEY MESSAGE 意味を取り違えると結論まで変わる語を14語選んだ。

本文中では、各節で最初に出てきた1回だけ点線を付けています。説明文は本資料による言い換えで、政府の公式定義ではありません。原文や統計の定義そのものは、各語の右に示した節にあります。

楔(くさび)1-1
この資料の言い方。投資停滞の悪循環の起点①「投資が伸びない」に、政府が打ち込もうとする一手を指す。中身は、政府が自ら投資し、政策で民間の投資を促すこと。日本成長戦略は楔を打ち込む計画であって、楔そのものではない。
成長サイクル/投資停滞の悪循環1-1
投資停滞の悪循環は、投資が伸びない→供給力と資本生産性が上がらない→技術を事業にできず市場を失う→収益が伸びず賃金も上がらない→次の投資が先送りされる、の5段。原文の記述を本資料が輪の形に並べ直したもので、原文にこの図はない。成長サイクルは、原文が描く投資から税収までの7ステップの好循環で、同じ輪を逆に回した姿とも読める。
官民投資額A-1
政策策定上の推計であり、確定予算でも企業のコミット額でもない。担当省庁が主要企業・団体へ投資予定をヒアリングし、将来部分を市場・投資の伸び率で補外して積み上げた値。主に2040年度までの累計フローで、官と民の内訳は公表されていない。
経済波及効果A-1
産業連関分析による試算。市場規模でも企業売上でもGDPの純増でもない。同じ供給網・需要を複数の項目が含み得るため、62項目の経済波及効果は合算できない。
発展段階(技術・事業フェーズ)3-1
政府の参考資料が、全62項目を現時点の技術・事業フェーズとして「研究開発」「実証」「商用化」「量産化」の4段階に整理したもの。内訳は研究開発5項目、実証20項目、商用化・量産化37項目。政府自身が、各フェーズは一定の幅を持って見る必要があると注記している。
『「強く豊かな日本」投資枠』1-1
日本成長戦略が創設する予算の枠組み。単年度予算では民間が先を読めないという課題に対し、複数年度の計画を基本とし、要求上限(シーリング)を設けない。経済安全保障上とくに重要な分野は特別会計で別枠管理し、償還財源の裏付けのあるつなぎ国債で規模を確保する。
シーリング1-1
各省庁が翌年度の予算を要求できる上限額。例年は概算要求基準として設けられる。『「強く豊かな日本」投資枠』ではこれを設けないとされ、外部評価では産業界だけが肯定し、識者・金融・経済同友会の3主体は規律の緩みとして懸念を示した評価が割れた論点(4-2)。
つなぎ国債1-1
償還財源の裏付けを決めたうえで、その財源が入るまでの間の資金を賄う国債。投資枠の規模を確保する手段として使う。外部評価では4主体が懸念で一致した論点で、償還財源と長期金利への影響が懸念されている(4-2)。
アンカーテナンシー3-1
政府が長期・大口の買い手となって初期需要を作ること。原文は公共調達による初期需要の確保として、需要創出・市場確保の手段の中心に置いている。
GX戦略地域3-1
GX(脱炭素に向けた産業構造の転換)に関わる投資を、地域を定めて集中的に後押しする制度。原文は立地競争力強化の手段として名称を挙げるにとどまり、対象・要件の詳細は示していない。
テストベッド3-1
新しい技術やサービスを、実際に使われる場に近い条件で試すための試験環境・設備。原文は「試験実証インフラ」「テストベッド環境」として、研究開発から実証の段階を支える立地側の手段に挙げている。
国土強靱化A-3
災害に備えて、インフラや体制を事前に整える政策の枠組み。17分野では⑭「防災・国土強靱化」がこれにあたる。第1次国土強靱化実施中期計画に基づく2030年度までの官民約20兆円強は、防災技術の2.6兆円とは別の枠であり、両者を足し合わせてはいけない。
潜在GDPの水準指数1-1
各国の潜在GDPが1991年を100としてどこまで伸びたかを示す指数。水準の伸びを比べるもので、単年の潜在成長率の比較ではない。2024年は米国229、英国183、フランス167、ドイツ155に対し、日本は134。
資本生産性1-1
付加価値額を資本ストックで割った値。設備などの資本が、どれだけ付加価値を生んでいるかを示す。2023年で日本は0.18と、主要国のなかで最も低い。
根拠資料
  • 政府資料に由来する語:内閣官房「日本成長戦略」(2026-07-21) S01/内閣官房「官民投資ロードマップ」(2026-07-21) S04/内閣府「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026-06-24) S03
  • 統計・推計の用語:内閣官房「日本成長戦略会議 基礎資料」(2025-11-10) S25/内閣府「国民経済計算」/University of Groningen「Penn World Table version 11.0」 S27
  • 収録する語の選定、および平易な言い換えによる説明文は本資料による。政府の公式な用語定義ではない。原文の定義がある語については、その定義を要約したうえで該当節へのリンクを添えている。
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A-7. 出典・参照箇所一覧

SOURCE POLICY 政策内容・数値は政府一次資料を優先し、評価・論評は発言主体または掲載媒体を分離して記載。

基礎資料・定量データ

S06地域未来戦略(内閣官房、2026-07-21)

3類型(戦略産業クラスター・地域産業クラスター・地場産業成長プラン)の位置付け・要件・記載項目・策定プロセス、必須KGIとPDCA、支援施策、戦略全体の上位KPI

海外産業政策の比較資料

S07CHIPS for America( 米国NIST、参照 2026-08-07)
1-2

半導体の国内製造・研究開発支援、直接支援と投資税額控除の政策構造

S08Inflation Reduction Act of 2022( 米国DOE、参照 2026-08-07)
1-2

クリーンエネルギー投資・生産税額控除、融資支援、国内供給網への誘導

S09Clean Industrial Deal( 欧州委員会、参照 2026-08-07)
1-2

EU製クリーン製造向け1,000億ユーロ超の資金動員、規制・技能・需要側施策

S10Net-Zero Industry Act( 欧州委員会、参照 2026-08-07)
1-2

2030年に域内製造能力40%というベンチマーク、許認可迅速化、調達・入札

S11Modern Industrial Strategy( 英国政府、2025-06-23)

10年計画、8成長分野、分野別Sector Plans、地域・技能・規制・投資環境

4-2 評価で用いた資料

S15新経済連盟コメント(日本ネット経済新聞・コメントは2026-07-21付)

4-2で使用した論点:AX、構造改革、バラマキ回避

原文を補完した政府資料

S232040年の就業構造推計(改訂版)について(経済産業省 経済産業政策局、2026-03)
1-1

就業者数の見通し(2022年 約6,700万人→2040年 約6,300万人)、職種別・学歴別の過不足(事務職440万人余剰、AI・ロボット等利活用人材340万人不足、現場人材260万人不足、理系120万人不足、文系80万人余剰)。地域ブロック別の需給差(関東一都三県+193万人〜関東それ以外▲89万人)。原文が脚注で引く推計の本体

S25日本成長戦略会議 基礎資料(資料9)(内閣官房 日本成長戦略本部事務局、2025-11-10)
1-1

p.1「潜在GDPの国際比較(1991年=100)」=2024年で米国229・英国183・フランス167・ドイツ155・日本134(OECD Economic Outlook 117 の推計による)。同ページ「我が国の潜在成長率の要因分解」=2025年0.6%、1991年3.3%(日本のみ。寄与度の数値ラベルはなし)

S27Penn World Table version 11.0(Groningen Growth and Development Centre, University of Groningen、2025-10-07)
1-1

資本生産性の国際比較(付加価値額÷資本ストック)に用いた資本ストックの原データ。原文脚注が引く一次資料で、資本生産性の値自体は本資料が計算した参考値ではなく原文脚注に基づく

外部評価は各主体の立場を区別し、事実記述と意見を分けて掲載しています。

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